帰還開始から約5年の福島・浪江町で進む「地域の足」整備 オンデマンド交通の実証実験も #知り続ける
実験終了時点で町民の約15%が登録
車両はワゴン型のキャラバン3台(11月1日から12月18日までは2台)とe-NV200を1台用意。前者はガソリン車、後者は電気自動車で、いずれも日産自動車製です。運行は、福島県内のバス、タクシー事業者3社に委託しました。 実験開始後、ユーザー登録の人数は徐々に増え続け、実験終了時点で町民の約15%が登録。登録人数の約半数は町外の人で、町民だけでなく町を訪れた人の足としても活用された様子がうかがえます。利用のピークは、朝夕の通勤時間帯でした。 こうした成果が得られた一方で、「高齢者への普及はまだ不十分」と宮下さん。「高齢者や女性を含めて、普段は自家用車を使っている方々の需要を獲得していかねばなりません」と課題を口にします。 実証実験は2022年度も実施を検討しているとのこと。宮下さんは、「モビリティサービスの観点で町の活性化につなげる取り組みを地道にやっていきたい。できれば、我々だけではなく町の方々と一緒に作り上げていければ」と力を込めました。
震災前より高齢化が進んだ浪江町
このオンデマンド交通について、「乗合で効率良く運行できる環境が整備されれば、高齢者の外出支援と生活の充実につなげられるのでは」と期待を寄せるのは、浪江町企画財政課企画調整係の志賀隆寿さん(34)です。 2011年3月11日午後、町を震度6強の強い揺れが襲いました。当時、税務課だった志賀さんは、確定申告の会場で今まで経験したことのない大きな揺れに遭遇しました。 「机が左右に動いて確定申告会場がめちゃくちゃになって、庁舎内のロッカーも全部倒れました」(志賀さん) その後発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、約2万1500人の町民が町外への避難を余儀なくされます。 町の中心部を含め、町全体の面積の約2割にあたる一部区域で避難指示が解除されたのは、震災から6年後の2017年3月31日のことでした。 その3日後の同年4月3日、町は早速デマンド交通の運行を開始。以来、避難指示が解除された区域内を運行する他、町内と南相馬市内のスーパー・医療施設を結んでいます。実際の運行は、町内に戻ってきて事業を再開したタクシー事業者に委託しています。