無学年授業も導入、勉強は「教わるもの」から「自ら学びとるもの」へ! ~自律学習で先頭を走る横浜創英の挑戦~【前編】
学校外の学びも単位認定
横浜創英の新しいカリキュラムでは、学校外の学びも単位として認めていく方針です。文部科学省は学外における学修の単位を36まで認めています。これを最大限に利用して、大学や企業など学校外で学ぶことに挑戦しやすくしていくといいます。それが前掲のⒷ実社会とつながる実学を軸とした学び方への転換、Ⓒ課題解決力を会得するための探究型を軸とした学び方への転換の一例です。 2024年6月現在、横浜創英は麻布大学生命・環境科学部、産業能率大学、城西大学、城西国際大学、昭和女子大学、清泉女子大学地球市民学部、法政大学、筑波大学、成城大学の9つの大学と提携しています。例えば、清泉女子大学地球市民学部の探究型の授業で学ぶと、横浜創英がそれを単位として認定します。 提携の大学には、なるべく既存の大学生向けの授業に参加させてほしいと頼んでいるそうです。大学生の集団に高校生というマイノリティーとして参加することで、新たな学びの刺激を受けることを期待しているからです。 大学での学びを単位認定している高校は他にもありますし、特別講座や「総合的な探究の時間」を異学年で学べる学校、学ぶ内容や難易度を細分化している学校、学校行事の運営を生徒に任せている学校はあります。しかし、ここまで幅広く生徒の主体性を尊重し、学びの自由度が高い学校はないように思います。
実学的な学びによって社会に貢献できる人材を育てる
先に紹介した通り、横浜創英の建学の精神は「『考えて行動のできる人』の育成」です。本間朋弘校長は、「具体的に表現すると、生徒の当事者意識を育てながら学びや学校運営を生徒主体に委譲し、実学的な学びによって社会に貢献できる人材を育てること」と言います。そのために《自律》《対話》《創造》という3つのコンピテンシーと9つのスキル*を、すべての教育活動を通して育てていくという考えです。 「伝統的に横浜創英が掲げる建学の精神を最上位目標として、育てたい生徒像を明確にしながら教育活動を行っていく。そのフレームとして、2025年に新しいカリキュラムがスタートするわけです。この教育で、これからの社会を主体的に作っていく人材が生まれていくことが楽しみでなりません」と、本間校長、山本副校長は口をそろえて話していました。 *コンピテンシー:仕事で成果を出す人に共通する行動特性のこと。9つのスキル:3つのコンピテンシーを会得するために、卒業までに生徒に身につけてもらいたい具体的な力。 後編では、勉強が「教わるもの」から「自ら学び取るもの」へと変換している世界の動きについて見ていきたいと思います。
寺田拓司