次期学習指導要領「先生の業務の見直し」も着手を 学校は何をするところ?教員のコア業務とは?
教員の仕事を抜本的に仕分ける
以上は、ほんの一部の例だ。次の学習指導要領を待たなくても、今現在も進行中で、「日本の学校はどこに向かおうとしているのか」「学校の先生の役割ってなんだろう」というところについて、さまざまな見方、考え方がありうる。 言い換えれば、学校の役割や教員のコア業務は何なのかについて、揺れている。そこで、ここでは2つの視点、軸から考えてみたい。 1つは、学校の役割として、現在の水準・範囲を維持・拡大するのか、それとも縮小するのか。もう1つは、教員の役割を維持・拡大するのか、縮小するのかだ。学校の役割・業務=教員の役割・業務とは限らない。学校の役割は維持しつつも、教員以外のスタッフを充実させるなどして、教員の仕事は減らすという選択肢などもある。 例示すると、次の図のように4象限考えられる。 1は、学校の役割も教員の役割も、維持または拡大していくものだ。例えば、「個別最適な学び」などと呼ばれているが、個々の児童生徒の特性や習熟度、関心などに応じて、学びをカスタマイズしていく方向は、今後いっそう重要となるだろう。併せて、探究や協働的な学びを教員が企画して、実施していくことも引き続き重要だ(企画でも実施でも企業や地域などと連携・協働することは多々あろうが)。 また、おそらく日本の学校で弱いのは、子どもの意見表明や子どもの学校運営への参画だ。例えば、修学旅行や運動会・体育祭を児童生徒が企画していくといった活動も、もっと増えていくとよいのではないだろうか。 これら以外もあるだろうが、働き方改革だと言っても、カット、カットばかりではなく、よりリソース(人手や予算、時間)をかけていくことも考えるべきだ。 2は、学校の役割は縮小しつつも、教員の役割は維持する方向のもので、あまり該当例はない。1つ思い浮かぶのは、部活動の地域移行(地域展開)したあとで、引き続き学校の先生が兼職して従事するような場合は、教員の業務は大して減らないので、2に該当する。 3は学校の役割も、教員の役割も縮小していく「撤退戦」をやる領域である。前述のとおり、授業時間の一部を、個々の先生が手作りでやっていくのではなく、ネット上のコンテンツやAIによる支援などを活用していく。近い例としては、すでに高校の一部では、教員による放課後の補習を減らし、学校は自習室や図書室を開放するなどしたうえで、生徒はアプリなどで自習している。 ほかにも、この3の領域には、たくさんの業務が思いつく。例えば、教職員の勤務時間の前に子どもが登校していて、実質的に見守りを先生たちがやっているわけだが、これは保育園でいうと延長保育に近い。自治体負担で朝の学童保育などをしていくべきではないだろうか。 関連して、財務省も英国の例を参考に、もっと学校や教員から仕事を切り離せと提案しているのは、この3の業務でいま教員がやっていることはたくさんあるからだ。前述した掃除なども、賛否はあるが、私はアウトソーシングでよいと思うので3に入れた。 4は、学校の役割は維持・拡大しつつも、教員がやることは減らしていく方向のもの。これもいろいろある。例えば、給食指導というのは、小学校の先生に聞くと、もっとも難易度が高い仕事の1つだ。誤飲リスクやアレルギー対応もあって、命にかかわりかねない。やけどなどの事故もある。美味しい給食は楽しい時間である一方で、児童同士でトラブルのもとにもなりやすい。 小学校教員から見れば、給食をボランティアなどに任せるのは考えにくいことだ。だが、これは教員免許が必要な業務ではないし、上記のとおり難易度は高いとはいえ、教員以外でもできないことではない。 私は、こうした給食時の支援なども含めて、教科学習ではないところは、生活支援、生徒指導専門スタッフを日本でも設置・配置していくべきではないかと思っている。学習の評価に関わらないところで支援する大人がいたほうが(「ななめの関係」と言われる)、子どもも話しやすい場合もある。 また、中学校と、とりわけ高校で重たいのが進路指導だ。だが、高校教員が就職などの相談にのるなどしても、必ずしもさまざまな仕事に詳しいわけではないし、キャリアコンサルの専門性が高いわけでもない(学校の先生しかやっていない人も少なくないし、多少民間経験などがある人もいたとしても、その程度の経験で生徒の就職支援がうまくいくとも限らない)。 似た話として、精神的につらい保護者に寄り添って話を聞くといったことも、今は事実上、学校の先生が一部やっているが、教員はカウンセラーではない。こうした相談支援業務の多くも、もっと専門職と分業していくべきだ。 ここでは書き切れないが、この2軸で分類しにくい業務もある。一例をあげれば、いじめ対策がある。私は、家庭の管理下のいじめ問題も学校に持ち込まれている現状は変えたほうがよいと思っている。つまり、学校と教員の役割の縮小だ。同時に、学校が認知したいじめ問題の対応が遅かったり、重大事態として認定しなかったりする問題には改善が必要だ。これは学校と教員の役割を拡大、もしくは生徒指導の専門職を入れることなどが考えられる。