相席スタート・山﨑ケイ「手に入るか分からないことにお金と時間を費やす」不妊治療の不安とは?
◆産婦人科医 稲葉可奈子氏の「専門家の目線」
不妊治療による精神的なつらさにどう向き合えば良いのか、Inaba Clinic院長で産婦人科医の稲葉可奈子先生に聞きました。 ――山﨑さんは、検査を受けた際「年相応に難しい」と説明を受けたそうですが、30代後半の妊娠確率は具体的にどの程度なのでしょうか? 稲葉医師: 「30代後半で年相応に難しい」というのは、妊娠が難しいっていうよりは「妊娠確率があまり高いわけではないよ」という意味合いでおっしゃったのかなと思います。自然妊娠の確率は 30歳を超えると20%を切るぐらいになり、40歳超えると5%くらいまで低下します。特に30代後半から年齢と共に妊娠確率が下がっていくという感じですね。 ――山﨑さんは、精神的なストレスが最もつらかったと語っていますが、治療中の女性さんが抱える主な不安や悩みにはどのようなものがありますか? 稲葉医師: 不妊治療の大変さには主に3つあります。まず、現在では保険適用になったとはいえ治療費がそれなりにかかってきます。しかもそれがいつまで続くのか、頑張ってお金を払い続ければ赤ちゃんに恵まれるのか定かではないという大変さがあります。2つ目は通院の大変さです。1カ月に5回、6回と通院が必要になることもありますし、明日明後日来てくださいと急に受診が決まることもあります。お仕事をしながら不妊治療を続けていくというのはスケジュールのやりくりも負担が大きくなります。最後3つ目は精神的なつらさで、今回もダメだったとか、落ち込んでしまったり、落ち込んだことが仕事に影響してしまったり、気持ちをどう取り戻していくのかという面が一番大変かなと思います。 ――精神的な負担を軽減するための方法は何かありますか? 稲葉医師: 妊娠に至るまでの過程はまさに奇跡の連続で、不妊治療に限らず、自然妊娠で妊娠する方でも、簡単には妊娠しないのが当たり前なんですよね。不妊治療の定義としては、1年間妊娠しなかったら不妊症とされていますが、以前は実は2年だったんです。自然妊娠での妊活にしても、それくらい時間がかかることはあるものです。ですので、「すぐにはできないものだよね」くらいの大らかな気持ちで、取り組んでいただくのがメンタル的には良いと思います。ただ、やはり年齢的なリミットがあり、時間に余裕がないと心の余裕も持てないと思いますので、不妊治療を始めるにしても、なるべく早めに始めるにこしたことはないですね。 ――不妊治療について周囲に相談することに難しさを感じる方も多いです。ご家庭や職場では、どのように不妊治療中の女性を支えることができるでしょうか? 稲葉医師: 不妊治療に対する捉え方は人によって様々なので、どういう言葉をかければいいのか難しいと思います。良かれと思って言った言葉が、相手を傷つけてしまうこともあると思うんですよね。例えば、ご家族やご友人の場合は、とにかく話を聞いてあげて、「応援しているよ」といった感じで接するのがいいと思います。また、アドバイスも皆さん良かれと思ってしがちですが、「あれがいいらしい」「これがいいらしい」といったことは、相手を惑わせてしまうことになりかねませんので、避けた方がいいかもしれません。純粋に話を聞いて、応援していることを伝えるだけで十分です。職場の方については、もし相談されたら、例えば急な受診が必要になった時など、「いつでも相談してね」と伝えてあげるのが、おそらく一番心強いサポートになると思います。 === 山﨑ケイ 1982年6月13日生まれ。千葉県出身。NSC東京校13期生。2013年、1年後輩の山添寛とお笑いコンビ「相席スタート」を結成。連載したコラム「人生が楽しくなる幸せの法則」が2019年に連続ドラマ化、本人もレギュラー出演。著書に『ちょうどいいブスのススメ』、『恋愛迷路は気づかないと抜けられない』(相席スタート)がある。 稲葉可奈子 京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得、双子含む四児の母。産婦人科診療の傍ら、病気の予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や正確な医療情報とリテラシー、育児情報などを、SNS、メディア、企業研修などを通して発信している。また、子宮頸がん予防やSRHRの推進など社会活動も行っている。 産婦人科専門医・医学博士/みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト 代表/みんリプ!みんなで知ろうSRHR 共同代表/メディカルフェムテックコンソーシアム 副代表/Inaba Clinic院長 ※この動画記事は、笑下村塾「たかまつななチャンネル」とYahoo! JAPANが共同で制作しました