再放送NGでお蔵入り? 高視聴率でも闇に葬られた民放ドラマ(2)強烈いじめに苦情の嵐…視聴者が潰した傑作?
放送当時は人気を博していた筈のあのドラマ作品が、なぜか再放送されない、もしくはいつの間にかされなくなった…。そんな作品に心当たりはないだろうか。今回は、何らかの理由で再放送が不可能となった不運な民放ドラマをセレクト。なぜ再放送できなくなってしまったのか、その理由を詳しく解説しながらご紹介する。第2回。(文・寺島武志)
『ライフ~壮絶なイジメと闘う少女の物語~』(2007)
原作:すえのぶけいこ 最高視聴率:17.4% キャスト:北乃きい、福田沙紀、細田善彦、大沢あかね、星井七瀬、末永遥、中村静香、夏目鈴、北条隆博、中村倫也、山田健太、うえむらちか、平野早香、関めぐみ、酒井美紀、瀬戸朝香、真矢ミキ 【作品内容】 主人公・椎葉歩(北乃きい)は希望の高校に合格するが、勉強を教えてくれた親友・夕子(大沢あかね)は不合格になってしまい、夕子は自殺未遂を起こす。 夕子への罪悪感から高校では人を避けていた歩に、同級生・愛海(福田沙紀)が声をかけたことがきっかけで2人は友達に。 しかし、2人の間にトラブルが起き、歩は愛海から執拗ないじめを受けるようになってしまう…。 【注目ポイント】 累計部数700万部を突破した、すえのぶけいこの漫画をドラマ化した作品。北乃きい演じる主人公・椎葉歩への壮絶ないじめシーンがあまりにもリアルだったため、中高生の子どもを持つ保護者から「いじめを助長する」という抗議が殺到した。 本作は、陰湿ないじめにも屈しない強い主人公を描いているのだが、テレビ局への苦情のみならず、抗議の声は放送倫理・番組向上機構(BPO)にも寄せられ、再放送が難しい作品となっている。 歩がクラスメートの羽鳥未来(関めぐみ)と友情を築き、やがて自分に味方してくれた未来に支えられながら、いじめに立ち向かっていく強さを描いたことで、いじめに苦しむ視聴者からは「勇気をもらった」などと、作品を評価する意見も多く、壮絶ないじめとの闘いの結末を描いた最終回の視聴者は、土曜日深夜にもかかわらず17.4%を記録した。 本作のメインテーマは「いじめとの闘い」なのだが、その描写が余りにリアル過ぎたために“再放送NG”となってしまう皮肉…。いじめを主導する安西愛海のグループに属する岩本みどり(末永遥)から発せられた「お前の席ねぇから!」という発言は、本作を代表する名台詞となった。 二言目には「コンプライアンス」が叫ばれる現在のテレビ界。時代の流れと言ってしまえばそれまでだが、“あれもダメこれもダメ”といった制約の中、リアルな描写によって描かれる作品がどんどん減ってしまっている。 テレビの衰退が囁かれて久しいが、その原因は本当にテレビ局のせいだけなのだろうか…。そんなことを考えさせられる出来事だ。
寺島武志