“カスハラ”についてどう思う?元CA芸人・CRAZY COCO「全てを真に受けて自分を責めていたらやっていけない」
サービス業を中心に「カスハラ」(カスタマーハラスメント)が問題視されており、厚生労働省は11月26日の審議会で、企業にカスハラ対策を義務づける方針案を示した。元外資系航空会社のキャビンアテンダントだったお笑い芸人のCRAZY COCOさんは、キャビンアテンダント時代、世界各国のお客様と接する中でさまざまなクレームに対応してきたという。当時の対応マニュアルや、会社のメンタルサポート制度、カスハラに対する考えについて聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
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「お金を払っているから何でも言うことを聞いてもらえる」と思っている乗客に悩まされたCA時代
――キャビンアテンダントになるためには、さまざまな訓練を受けるそうですね。COCOさんはどんな訓練を受けたんですか。 CRAZY COCO: まずはフライングライセンスを取るために、「トレーニングカレッジ」というところで1カ月半くらい訓練を受けるんです。そこでフライト中のセキュリティや医療行為などを学んだ後は、サービストレーニングとしてクレームへの対処方法をひと通り学びました。 例えば、今にも暴れそうなくらい酔っぱらっているお客様に「お酒を持ってこい」と言われた場合、すぐに持っていくのもダメだし、だからと言って「もうあなたにお酒はサーブできません」と伝えてしまうと余計に激高されてしまいます。そういうときは、少しタイミングを遅らせながら水で割って薄めたお酒を出すとか、酩酊されている方には、水を入れたカップの飲み口にお酒を塗って出すとか、そういうメソッドを学びました。 ――キャビンアテンダントとして働いていらっしゃった時は、どんなお客様が多かったのでしょうか。 CRAZY COCO: ほとんどは素敵なお客様ばかりでした。特に海外の方は感情を表に出してくれることが多かったので、飛行機を降りる時に「本当に素敵なサービスをありがとう」とハグしてくれたり、「あなたがニューヨークに遊びに来る時は連絡して!」と名刺をくれたりしました。 あとは頼みごとをする時、毎回「時間があったらでいいから、コーヒーのおかわりもらえる?」というように、必ずこちらを気遣った言い方をしてくださるお客様がいて「神だ!」と思いましたね(笑)。そういう方には真っ先に対応したくなっちゃいます。 ――逆に、お客様の対応に悩むこともありましたか? CRAZY COCO: 全ての航空会社に共通する悩みだと思うのですが「お金を払っているから何でも言うことを聞いてもらえる」と思っているお客様への対応ですね。 例えば、エコノミークラスで、機内食をビーフかチキンか選べる場合、ビーフを希望していたけど品切れで選べなかった時に「こっちはお金を払っているんだからどうにかしてビーフを持ってこい!」というクレームを言うお客様は多かったです。こちらは「食事を提供する」というお金を払ってもらっているだけで「100%希望の食事を提供できる」ということではないので、正直、受け入れてほしいなと思うんです。もしアレルギーなどで食べられないものがある時は、国際線だと事前にスペシャルミールを申し込める場合もあるので、クレームを入れる前に自分でも情報を集めてきてほしいとは思っていましたね。 ――そういったクレームに対しては、どのように対応していましたか。 CRAZY COCO: 機内食で怒っている方の場合だと、朝ご飯は選べなかったとしても、昼ご飯には必ずその方が食べたいものを持っていくなどで対応しました。そうすると飛行機を降りる時には「良いサービスをありがとう」とお礼を言ってくださる方もいて、終わり良ければ全て良しというか。そういう風にキャビンアテンダントが対応できるところは自分たちで解決していましたね。 ただ、お酒に酔って暴れたり機材にダメージを加えたりするお客様の場合だと、エスカレートしているとわかった時点ですぐにパーサー(キャビンアテンダントを統括する責任者)に連絡して対応してもらっていました。でも、パーサーが女性でお客様が大柄の男性などでは太刀打ちできないので、そういう場合は機長に連絡して「リストレイン」というお客様を取り押さえるための許可をもらい、男性のキャビンアテンダントの力も借りてみんなでお客様を取り押さえて、着陸まで座席で過ごさせるという対応をしていましたね。 ――ちなみにそういう厳しい対応をとるときは、英語と日本語のどちらがコミュニケーションしやすいですか? CRAZY COCO: 私は英語でしたね。私がいた航空会社では、英語だと「しかるべき対応を取らせていただきます」という英語のフレーズがマニュアル化されていたんです。それに、英語を話すときは自然と人格が変わるから強気でいけました。でも、日本語バージョンのフレーズはなかったんですよ。日本語で「しかるべき対応を取らせていただきますよ!」と言うのも、あまりしっくりこなくて。だから、今まで私は日本人のお客様に強く言ったことはないですね。