300年間沈黙の富士山 巨大地震で噴火誘発か?
2月23日は「富士山の日」。昨年はユネスコの世界遺産リストに登録され、“日本のシンボル”としても世界にアピールする富士山だが、その一方で懸念されているのが噴火の可能性だ。300年間も噴火もなく優美な姿を見せ続ける富士山に対して、特に2011年3月11日に起きた東日本大震災、さらには静岡県沖から四国・九州沖で発生が予測される“南海トラフ地震”の誘発による噴火の可能性を、火山学者らは指摘する。美しさを翻して突然襲いかかる自然の猛威に、いっそうの心構えや防災の準備は必要だ。
世界の巨大地震と火山噴火
これまで世界各地で発生したM(マグニチュード)9クラスの巨大地震は、「例外なく火山噴火を誘発した」と指摘するのは火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長(東京大学名誉教授)だ。1952年のカムチャツカ地震(M9.0)、57年のアンドレアノフ地震(M9.1)、60年のチリ地震(M9.5)、64年のアラスカ地震(M9.2)、2004年のスマトラ島沖地震(M9.0)では、いずれも近くの複数の火山が翌日から数年以内に噴火した。 地震が火山の噴火を誘発するメカニズムのうち最も有力なのは、地震によって岩盤内の応力が変化し、火山の地下にある“マグマだまり”の圧力が減少する。するとマグマの二酸化炭素などの揮発性成分が発泡して軽くなり、上昇を始める。いったん上昇しだすと、さらにマグマの圧力が下がるので、どんどん発泡が促進され、さらにマグマが深くから供給されてくる、という仕組みだ。 東日本大震災での地震も、M9.0という巨大地震(東北地方太平洋沖地震)だった。この巨大地震の発生直後、北海道から九州に至る20の火山の直下で一時、地震活動が活発化した。多くは1~2日で収まったが、箱根山(神奈川・静岡県)や焼岳(長野・岐阜県)では人に感じる有感地震もあった。また、震災4日後の3月15日夜には富士山の直下約15キロを震源とするM6.4の地震が発生し、静岡県富士宮市で震度6強が観測された。「このまま富士山噴火につながるのでは…」と、多くの火山学者らに一時緊張が走った。