大切な葬式の日に息子が初オネショ…シングルファザー住職の「二足のわらじ」奮闘記
朝、スマートフォンのアラームがジリジリと鳴る。 幸せな眠りのなかから、意識が日常に戻ってくると、すぐそばで寝息を立てている長男の布団の異変に気付いて愕然とする。 「うわっ、冷たい……」 夢であることを期待して、もういちど布団を触るが、やっぱり冷たい。この感触は間違いなく「アレ」である。長男はまだ6歳になったばかり。年齢を考えれば責めるのはかわいそうなのだが、タイミングの悪いことに、長年お寺のために尽くしてこられた檀家総代の奥さまのお葬式が、午前中に入っている日だった。子供2人との3人暮らしが始まったばかりの頃で、私にとって初めてのオネショ処理。右も左もわからない。 言いようのない怒りがこみ上げる。「なんでお葬式にオネショをかぶせてくるのよ!」とスヤスヤ眠っている息子を全力で問い詰めてみるが、微塵も悪気がない息子は起きる気配すら見せない。幸せそうな寝顔は「なんでお葬式の日ってオネショしたらダメなの?」と逆に質問したそうにも見える。
かくいう私自身も、実のところはただ愚痴をぶつけたいだけで、オネショの理由はわかっている。お葬式が入ると、戒名を考えたり、白木の位牌にその戒名を書いたり、葬儀前日には金襴の袈裟を法衣箪笥からゴソゴソ引っ張り出したりと、支度に追われて子供のことまで気が回らない。そうすると、寝る前に「トイレに行ってから寝るのよ」といういつものやり取りをつい怠ってしまう。これが最大の敗因である。 ● 聖俗を行き来する シングルファザー住職 布団にもぐったままスマホを操作し、グーグル先生に対処の仕方を尋ねると、「できるかぎり早めに処置を」「時間が経つにつれ臭いが取れなくなります」というもっとも欲しくない回答が出てくる。私が抱いていた「少しでも長く布団にもぐっていたい……」「お葬式が終わってから対応したい」という願望を、容赦なく打ち砕いていく。 ネット上の情報が的確な対処方法だというのもわかるので、ため息をついている間もなく、子供をたたき起こして布団を引きはがす。敷布団にしみ込んだオネショをタオルなどに吸い取らせ、布団カバーとパジャマを洗濯機に突っ込み、並行して朝ごはんの準備をして小学校と幼稚園に送り出す。