JRの券売機はなぜ使いにくいのか? デジタル化が裏目に出たワケ! 利用者視点で考える鉄道の未来とは
駅員削減の影響と課題
JR各社はデジタル化と並行して現業部門の職員削減を急速に進めている。 図は国交省の「鉄道統計年報」から、JR東日本について輸送人員(年間)100万人あたりの駅員数を示すが、この30年間で約三分の一にまで減っている。 正社員から派遣社員への置きかえもあるので見かけの減り方はこの数字より緩和されているが、無人駅の増加、窓口の閉鎖や営業時間の短縮、大都市圏でさえホームから駅員の姿が消えるなど、利用者の視点でも「駅員がいない駅」を実感できるだろう。 乗客にとって鉄道との接点となるのは「駅」であり、その重要性が十分に認識されていないように思える。駅の軽視は、鉄道の運営において大きなリスクをともなう。 特にローカル線では、JRが駅の無人化を進めるなか、地元の観光協会などが協力して無人化を回避しようとする努力が見られる。例えば、第三セクターの「えちぜん鉄道(福井県)」は、駅トイレの整備など、日常的に利用者を大切にする取り組みを行い、利用者の増加を実現している。 しかし、最近のJRでは、「乗らなければ乗らないで構わない」というような姿勢が目立ち、少し残念に感じられる。
メンテナンス職員数の急減
図は前項と同じく「鉄道統計年報」から、100万車両km人あたりのメンテナンスに関連する職員数(工務・電気・車両)を示す。 この「車両km」とは、たとえば10両編成の電車が10km走ると「100車両km」とカウントする。車両のメンテナンスはおよそ総走行距離に比例するし、線路や架線も直接的に比例ではないが、やはり線路を通過する車両の総走行距離と密接に関連する。 駅員と同じく作業量あたりの職員数が約三分の一にまで減っている。これらの技術部門では外注化が進展しているので、必ずしもメンテナンスそのものを三分の一に省略したという意味ではないが、現実には憂慮すべき事態が出現している。 2023年8月に、神奈川県内を走行中のJR東日本・東海道線の電車が線路脇の傾いた電柱と衝突して乗客と運転士が負傷した事故がある。コンクリート製の電柱の内部損傷が原因であり、経年劣化が進んでいたが点検で発見できなかったという。ローカル線どころかJR東日本の主力収益路線である東海道線がこの状態である。