JRの券売機はなぜ使いにくいのか? デジタル化が裏目に出たワケ! 利用者視点で考える鉄道の未来とは
無形情報に代わる現物の安心感
1990年代の後半にインターネットが登場したころ、ある経済学者が 「近い将来にマルチメディア・システム(当時の呼び方)が構築されると、自宅のパソコンから航空券や宿泊が予約でき、航空券が宅配便で届き、クレジットカードによる支払手続きも自動的になされる」 という予測を語っていた(中条潮『規制破壊』東洋経済新報社、1995年)。システム自体は今では当たりまえのこととして実現しているが、傑作なのはオンラインで予約しておきながら 「航空券が宅配便で届く」 である。ただしこれには笑い話にとどまらない要因がある。チケットの宅配はこの著者が利用者の心理を端的に代弁したともいえる。無形の情報だけの予約より現物のチケットが手元にあったほうが「安心」するし、日付・時刻・便名・席番など必要な利用情報を一見して確認できる便利さもあるからだ。 これは航空券を鉄道の指定券に置きかえても同じである。
分割民営化の逆風
東京駅の新幹線掲示板(上記画像)について、JR東日本とJR東海はデジタル化を進めているが、互換性のないシステムが原因で 「使えません」 「通れません」 といった表示が目立つ。このような掲示があるのは、実際にトラブルが多いからだろう。利用者にとっては、かつて国鉄時代には全国共通だったものが、分割民営化後に各社の営業エリアを意識して使い分けなければならないのは不便に感じることもある。 国鉄分割民営化の際には、分割しても不便にはならないはずではなかったのか。
新幹線乗り換えの壁
次の画像はJR東日本の東北新幹線から、JR東海の東海道新幹線に乗りかえる改札口である。 「EX-IC」とはJR東海のチケットレスシステムであるが、JR東日本側からは「通れません」という。1991(平成3)年6月には、それまで上野発着だった東北新幹線が東京駅までつながってハード的には利便性が大きく改善されたのに、それから30年以上経ってもソフト面がまだこの状態である。 なお交通系ICカード(Suicaなど)との連携を設定して使う方法が別にあるのだが、面倒なので筆者でもあまり利用する気になれない。