インドネシア地震津波は海底地すべりが原因か 日本でも中央構造線断層帯などで起きる可能性
9月末にインドネシア・スラウェシ島中部の中スラウェシ州を襲った大地震。発生から2週間あまりが経過したが、インドネシア国家防災庁(BNPB)の発表によると現時点で死者の数は2000人以上で、まだ5000人以上の行方不明者がいるとの報道もある。 東北大学災害科学国際研究所はこのほど、この地震に関する調査報告会を開き、震源に近い沿岸の州都パル市を襲い多くの命を奪った破壊的な津波は、活断層の活動に伴って起きた海底地滑りが原因の可能性が高いとの見解を示した。 同じ原因での津波発生は、中央構造線断層帯など海域を通る活断層が多く確認されている日本でも考えられるという。
大部分が陸域を通る「パルーコロ断層」がずれ動いた左横ずれタイプの地震
10月4~6日にかけて現地を訪れた今村文彦教授(津波工学)や、活断層の地震に詳しい遠田晋次教授(地震地質学)らが、これまでに分かっていることを発表した。 地震が発生したのは9月28日午前6時ごろ(日本時間同7時ごろ)。地震の規模を示すマグニチュード(Mw)は7.5、震源の深さは約10キロ。遠田教授によると、今回の地震は1995年阪神淡路大震災や2016年熊本地震などと同じく活断層がずれ動くことによって起きたと考えられる。中スラウェシ州を南北に貫く「パル-コロ断層」と呼ばれる活断層が約160キロにわたって活動し、断層の東側は北に、西側は南に最大で約5メートル水平方向にずれ動いた、「左横ずれタイプ」の地震だという。 活断層の約8割は陸域を通っているが、途中一部がパル湾と呼ばれる海域を通っている。この部分が津波を引き起こしたと考えられる。
津波の高さは10メートル超えた可能性も
現地を見て回った今村教授によると、津波は沿岸部から200~300メートルの範囲を襲った。建物の基礎のみを残してすべてが流されている場所も多くあった。パル湾沿岸部の津波痕跡を調べた結果、浸水の高さは数メートルだったが、複数の目撃談から、10メートルに達した場所もあると考えられるという。 ただ、シミュレーション結果などでは、水平方向の動きが主である今回の地震の断層のずれだけで、ここまでの高さの津波になるとは考えにくいという。このため、今村教授は「地震の揺れなどによって、海底の土砂が深いところに滑り落ちることで海面が変動し、津波が発生した可能性が高い」との見解を示した。 実際に、海底ではないが、現地の沿岸部では地滑りをしている場所が複数確認したという。また、パル湾を囲む半島の地形やパル湾の海底地形図などを確認すると、浅いところから急激に下がる場所も数多くあり、「過去に地滑りが起きた痕跡で、今回も同じような現象が起きたと考えられる」と説明している。