5~8番ホームが「欠番」となった日暮里駅のナゾ
ホームの柱にも歴史あり
東北線の列車が停まっていた痕跡を示すのが、現在の日暮里駅の番線表示である。東側から、京成線が0~2番線、JR常磐線が3.4番、5~8番は欠番で、京浜東北線南行.・山手線外回りが9.10番、山手内回り・京浜東北北行が11.12番線となっている。12番線と聞くと結構なターミナル駅を思い浮かべるけれど、かつて東北線列車が停まっていた5~8番で底上げされているのだ。 その昔は、5.6番が東北線上り列車、7.8番に下り列車が発着していた。1970年代の半ばごろまで、階段と石畳が崩れかけた2面のプラットフォームが風雨にさらされたまま残っていたようだ。上りの東北・常磐線の長距離列車乗務員は、この“廃駅”に差しかかるとやおらマイクを握り「皆さま、たいへん長らくのご乗車、お疲れさまでした。まもなく終着の上野です……」と告げるのが常だったという。 しかし、いまここにあるのは東北新幹線が上野地下駅へ向けてもぐってゆくコンクリート造のトンネル出入口だ。1974(昭和49)年から始められた、東北新幹線建設にともなう日暮里駅改良工事により、5~8番線を通っていた東北線の線路を常磐線側に寄せて旧ホームを撤去し、新幹線の建設スペースを生み出したのである。 ホームの上屋を支える柱にも歴史が秘められている。わかりやすいのは11.12番線の中央付近だろう。古レールを使った柱が山側は崖(がけ)の擁壁(ようへき)に、東側は線路のあいだに立てられているので、ホーム上がすっきりしているのだ。それに対して9.10番線や、11.12番線でもその後に手が加えられた部分は、今様の柱がホームに立ち並んでいる。 だが、よく観察すると、11.12番線の上屋を支える線路間の柱が、9.10番線側にも腕を伸ばしかけながら切断されているのがわかるだろう。つまり、かつては9.10番線もホーム上に柱を据えず見通しをよくしていたのだが、新幹線の工事で線路間の柱が邪魔になったため、柱もろとも上屋をつくり直したのである。せっかく、いにしえの鉄道技術者たちがホーム上をすっきりさせようとした配慮を、新幹線が断ち切ってしまったかたちだ。