吉田麻也が語った「負けるべくして負けた」の真意とは…W杯アジア最終予選“開幕戦”でランキング下のオマーンにまさかの敗戦
吉田のロングフィードに抜け出したMF伊東純也(28・ヘンク)が放った、至近距離からの強烈な一発は相手キーパーの真正面を突いてため息に変わる。何度もチャンスを作りながら決定力不足に泣き、カウンターから失点するこれまでのアジアの格下相手の敗戦パターンではなく、準備や戦法を含めたすべての面で上回られた末の完敗だった。 「なかなかボールが上手く回せなかったというのはもちろんあるけど、それでもボールを大事にしすぎたかな、と。ポジショニングや選手同士の距離感、判断の速さ、集中力といろいろあると思うけど、全部が上手くはまっていないと感じていた」 攻守両面で最後まで歯車が噛み合わなかった一戦を、吉田は「フラストレーションが溜まった」と唇をかみしめた。ならば、オマーンに主導権を握られたのはなぜなのか。ボランチ遠藤航(28・シュツットガルト)は「ミスマッチ」を理由にあげた。 「日本にはトップ下がいるので相手のアンカーを抑えられるけど、逆に向こうのインサイドハーフが来たときに、トップ下の選手を合わせた3人をどう抑えればよかったのか」 日本の[4-2-3-1]に対してオマーンは[4-3-1-2]で臨んできた。中盤はダブルボランチの日本が正三角形に、アンカーを起用するオマーンはひし形になる。 オマーンのアンカーはトップ下の鎌田大地(25・フランクフルト)がケアできる。しかし、オマーンの両インサイドハーフとトップ下に対しては、遠藤と柴崎で対峙しなければいけない。必然的に中盤で生じる数的不利が「ミスマッチ」となる。 ボランチを経由したパスワークを封じたオマーンは、さらに中央の守備を固めながら鎌田、1トップの大迫勇也(31・ヴィッセル神戸)に入る縦パスを遮断。攻め手を奪われた日本は、吉田の言う「ボールを大事にしすぎた」時間帯が多くなった。 オマーンの守備網の外側でパスをつなぐだけだから、必然的にボール支配率は上がる。ただ、相手の脅威にはならない。大事にしすぎたとは、イコール、リスクを冒さなかったと置き換えられる。同じ光景は先の東京五輪でも見せつけられた。 延長戦を含めた120分間を0-0で終え、PK戦の末に勝利したU-24ニュージーランド代表との準々決勝。途中から中盤の形をひし形に変えた相手に対して、東京五輪の指揮を執った森保監督は選手交代以外の策を最後まで打たなかった。 いや、打てなかったと表現した方がいい。中盤に生じた「ミスマッチ」を、たとえばシステム変更を介して対抗できない。当初は使い分けを公言していた3バックも長く封印したまま、選手の力だけに任せる展開が再び繰り返され、ついに手痛い黒星を喫した。