外来爬虫類、昆虫などに寄生して「ダニ」が密入国!? 危険な種類も
地球環境・生態系にとって、なくてはならない生物「ダニ」に異変?
侵入外来生物を研究している国立環境研究所・侵入生物研究チームの五箇公一さんが、「世界を駆け巡るダニ」について解説します。 生物多様性の保全が唱われて久しいですが、生物多様性を語る上で対象となる生物は、目で見て分かる、美しい、かわいらしい、あるいは格好がいい動物や植物が主流を占めます。しかし、目に見えない、(一般には)美しくない、微小な生物達も立派な生物多様性の構成員であり、重要な生態系機能を担っています。 ダニという生物もまた、寄生生物=悪いやつと思われがちですが、ダニは、4億年もの昔から、この地球上に生息し、繁栄を続けて来た、生物界の先達者です。身体一つに脚が8本という基本形は何も変わらず、身体の大きさもせいぜい1cmが最大級で、ほとんどがマイクロ・ミクロメーターの範囲という微小なもの。この小さな身体で何千何万という種に分化し、土の中で有機物を食べるもの、植物に寄生するもの、動物に寄生するもの、水の中を泳ぐもの、はたまた人の顔に寄生するもの……と地球上のいたるところに生息しています。 これだけの長い進化の歴史をもち、これだけ地球上に広く分布しているということは、ダニという生物がいかにこの地球環境および生態系にとってなくてはならない生物であるか、ということを示してもいます。小さくてほとんど見えない彼らも立派な生物多様性の一員なのです。 しかし、いま、このダニの長い歴史にも、外来種問題という異変が生じています。
ハウストマト授粉用に輸入したハチに寄生し、日本上陸を果たしたダニ
セイヨウオオマルハナバチはヨーロッパ原産のハナバチで、1980年代に大量増殖技術が確立され、90年代よりヨーロッパの工場で人工巣が量産されて世界各地で販売されるようになりました。日本でも、91年より農林水産省がハウストマトの授粉用に導入を開始し、現在、7万を超えるコロニーが毎年流通しています。 本種の導入によって、トマトの生産効率は大幅に向上しましたが、一方で、ハウスから逃亡した個体が野生化して、分布を拡大し、在来のマルハナバチ類の生息域を圧迫していることが問題となっています。 国立環境研究所が調査した結果、輸入された商品コロニー内のハチ成虫体内から、ハチ体内の気管に寄生して、昆虫の血液にあたるリンパ液を吸って生きているマルハナバチポリプダニというダニが発見されました。