外来爬虫類、昆虫などに寄生して「ダニ」が密入国!? 危険な種類も
クワガタムシとダニの進化の歴史
クワガタを飼育した経験者であるならば、クワガタムシ成虫の背中に無数の白い小さなダニが寄生している場面をよく見たことがあると思います。これはクワガタナカセというクワガタムシ特有の外部寄生ダニで、宿主であるクワガタムシには特に危害も加えず、共生生活を営んでいます。
このダニはアジア全域のクワガタムシの体表に生息しています。ワガタムシの体表にたまった老廃物やカビ類を食べていると考えられます。クワガタナカセはクワガタムシ成虫の体表上でしか生息できないことから、宿主であるクワガタムシと寄生生物であるクワガタナカセの間には、長い年月を経て共生関係が築かれています。 クワガタとダニのそれぞれのDNAを調べて系統関係を比較した結果、両方の生物とも遺伝的多様性が高く、宿主であるクワガタムシごとに、それに寄生するクワガタナカセも特異的に種分化していること、その分化の歴史は1,000万年を超えることが示唆されています。
しかし、この長い進化の歴史も、人為的要因によってかく乱される恐れが高まっています。2000年代に入ってから外国産クワガタムシの飼育ブームによってその輸入が急増しました。もともと生きている外国産クワガタムシは農林水産省の植物防疫法によって輸入が一切禁止されていたのですが、貿易の自由化に伴って、1999年11月に輸入が解禁されて以降、年々、輸入数が増え、ピーク時には年間100万匹を超える個体数が輸入され、現在でも30万匹ほどの生体が輸入されています。 外国産のダニが国内で分布を拡大すれば、日本固有のクワガタナカセの遺伝的多様性が撹乱され、クワガタムシ-ダニの共種分化の歴史も書き換えられることになります。 もちろんクワガタナカセ自体は、クワガタムシにとっては、いてもいなくても大した影響のない存在ですが、生物移送にともなって目に見えない微小な生物の進化の歴史にも異変が生じることをクワガタナカセは教えてくれます。