【このままでは“ジリ貧”なのは皆わかっているのに…】「緩慢な衰退」から日本企業が脱却できない根深い訳「大胆な事業再編」を迫られてるのに、なぜできない?
「戦略と集中」を換言すれば、「捨てる」ことである。 「何をやるか」を決めるのではなく、「何はやらないのか」を決めなくてはならない。「捨てる」事業を決めなければ、経営資源が捻出できない。勝てる見込みのない事業を抱えていても、企業価値を高めることはできない。 「戦略シフト」とは「リソースシフト」のことで、大胆に資源配分(人・モノ・金)を変えることこそが「戦略シフト」である。 資源配分の基本は 「傾斜資源配分」だ。どの事業に「傾斜」させるのか。そこに「経営の意志」があらわれる。
日本企業の多くは、中期経営計画の中で「選択と集中」や「戦略シフト」を打ち出していても、大胆な「リソースシフト」を行ってこなかった。それでは事業の入れ替えが進むはずもない。 「成長しない事業」「儲かる見込みのない事業」を放置することは、現場の士気の低下につながる。 低収益で喘いでいるのに、投資もしない、てこ入れもしないで、現場に白兵戦を強いる。そこに経営の意志や合理性はまったくない。 ソニーグループもダイナミックな事業の入れ替えで、業績は急速に回復している。祖業の電機を大胆に縮小する一方で、音楽などのエンターテインメント系事業に軸足を移したことが大きな要因だ。
これまでの日本企業は「インダストリアル・インベスター」、つまり事業投資家目線での投資判断を行うのが常であった。 事業部門が事業投資家目線を持ち、投資判断を行うのは当たり前のことだ。そこには事業への愛着もあるだろう。 しかし、全体最適を目指さなければならない本社(コーポレート)が、事業部門と同じ判断基準で事業ポートフォリオを考えていたのでは、戦略シフトは進まない。 いま本社(コーポレート)に求められているのは、「フィナンシャル・インベスター」、つまり財務投資家目線で客観的、冷徹に事業の可能性、要否を判断し、事業の入れ替えを推進することである。