【このままでは“ジリ貧”なのは皆わかっているのに…】「緩慢な衰退」から日本企業が脱却できない根深い訳「大胆な事業再編」を迫られてるのに、なぜできない?
それにより、全社の事業ポートフォリオの適正化が行われるだけでなく、日本の各業界における合従連衡が進み、より強い企業が生まれる可能性は高まる。 ■「適社性」こそ最も重要な判断軸 事業ポートフォリオの管理をするには、さまざまな観点から各事業の評価を行う必要がある。市場性、成長性、収益性、競合などさまざまな観点から吟味し、「勝てる事業」を選択しなければならない。 その中で最も重要な要素が「適社性」である。
「適社性」とは、選択する事業が自社の持つ組織能力(現場力)や組織カルチャー、さらには経営理念やビジョンとの「親和性」「フィット感」があるかどうかを見極めることである。 それぞれの会社には、それぞれの会社の個性、持ち味(ユニークネス)がある。そうした個性や持ち味を活かし得る事業を選択しなければ、成功はおぼつかない。 一方で、それぞれの事業には固有の事業特性がある。 たとえば、エレクトロニクス分野であっても社会インフラを担うような事業は、比較的スピード感は緩やかだが、じっくりと丁寧につくり込むことが求められる。
逆に、半導体などは変化が目まぐるしく、スピード感のある意思決定、実行ができなければ、変化についていくことは難しい。 かつての日本の大手電機メーカーが半導体事業で苦境に陥ったのは、卓越した技術は持っていたが、そのスピード感についていけなかったのがひとつの要因である。 つまり、事業特性と組織能力、組織カルチャーの「親和性」が低く、「適社性」が担保されていなかったのである。 もちろん、「親和性」が低いから新たな事業にチャレンジするべきではないという話ではない。自社の組織能力や組織カルチャーに縛られてしまっては、成長、発展の芽を摘んでしまう。
大事なのは、市場性や成長性といった「外的要素」だけで事業を選択するのではなく、組織能力や組織カルチャーといった「内的要素」を常に勘案することである。 「適社性」が高く、「親和性」が担保されていればいるほど、成功確率は高まるのである。 ■「経営主導の事業再編」こそ効率よく進む 日本企業は事業に対する思い入れ、愛着が強い。それは日本企業の強みでもあるが、弱みでもある。 愛着が強いがゆえに、大胆かつダイナミックな事業の見直し、入れ替えができない。