【このままでは“ジリ貧”なのは皆わかっているのに…】「緩慢な衰退」から日本企業が脱却できない根深い訳「大胆な事業再編」を迫られてるのに、なぜできない?
こうした思い切った「戦略シフト」が奏功し、送配電や鉄道といった環境インフラ事業の受注残は8兆5000億円(2023年9月末)と、前期末に比べ23%増えている。 このとき打ち出したのが「事業の撤退方針」だ。「売上高営業利益率の目標を8%超に設定し、5%未満の事業は撤退する」と打ち出した。 日本の大企業で日立のように明確な事業撤退方針を公表している会社はまれだ。 ■「勝つ事業」を選択し、経営資源を集中させる
経営は合理的でなければならない。自分たちの強み・弱み、競争環境における立ち位置を客観的、俯瞰的に捉え、「これなら勝てる」という合理的な戦略シナリオを描く必要がある。 その要諦はシンプルである。それは「選択と集中」である。 「これなら勝てる」という事業を「選択」し、経営資源を「集中」させる。それにより、模倣困難性の高い「勝てる」事業を育てることができる。 未来永劫続く事業など存在しない。かつては「花形」だった事業も、時の移り変わりとともに衰退していく。
過去の栄光にしがみついても、そこから未来は生まれてこない。 もちろん、事業によって「寿命」の長さはまちまちである。 自動車のように100年以上続く事業もあれば、半導体のように目まぐるしい技術革新によって数年で入れ替わる事業もある。 厄介なのは、比較的「長寿」の事業である。 社会インフラを支えるような事業は、すぐになくなることはない。時に「神風」(特需)が吹いて、瞬間的に息を吹き返すこともある。だから、どうしても「延命」しがちである。
■経営意志とは「捨てるもの」を決断すること 事業領域をどれほど広げるかは、それぞれの会社ごとに異なる。経営資源が潤沢で、余裕のある企業は、ある程度「戦う土俵」を広げることが可能だ。 一方、「限られた経営資源」しかない企業は、「戦う土俵」を絞り込まざるを得ない。「あれもこれも」と手を出していたのでは、持続的な競争優位を確立するのは困難である。 理屈はシンプルなはずなのに、多くの日本企業は思い切った「戦略シフト」ができていない。