【このままでは“ジリ貧”なのは皆わかっているのに…】「緩慢な衰退」から日本企業が脱却できない根深い訳「大胆な事業再編」を迫られてるのに、なぜできない?
それがわかっていながら、多くの日本企業は大胆な事業ポートフォリオの見直しを進めてこなかった。 それは、経営管理だけの話ではない。赤字からの脱却が見通せない現場にとって、それは自分たちの存在意義を問われ、プライドを喪失させる深刻な事態なのだ。 ■「黒字化プレッシャー」に追い込まれる現場 品質不正を起こした企業で見られる特徴のひとつは、赤字事業もしくは低収益事業で不正が起きているということである。 競争力が弱く、低収益・低採算に苦しむ事業を営む現場が、不正に手を染めやすいという構図は明らかである。
高収益事業、成長事業で不正が起きるケースはまれである。投資体力があるので、新たな設備を増強したり、人員補充が比較的やりやすかったりするので、現場があえて不正を犯す理由がない。 一方、赤字事業、低収益事業は上からの「黒字化プレッシャー」は強いが、新たな投資を行うことができず、追い込まれてしまう。 品質不正を起こしたある工場の班長は、こう切り捨てた。 「これ以上のコストダウンは限界だ。営業や上の人間に値上げの必要性を訴えても、『仕事が切られるかもしれないから』と及び腰だ。
工場長は『限界利益は出ているから』と正当化するが、先のない事業なのは、みんなわかっている」 もちろん新規事業の立ち上げ時のような「健全な赤字」もある。 しかし、長い間営んでいる事業が収益を上げられないという事態を放置することは、経営の怠慢以外の何物でもない。 2009年3月期に7873億円もの最終赤字を計上した日立製作所は、思い切った構造改革を断行し、復活を遂げた。 その過程では、日立金属、日立化成、日立電線(2013年に日立金属と合併)という「御三家」と呼ばれた中核子会社を切り離し、衝撃を与えた。
また、日立国際電気、クラリオンなどの知名度の高い子会社も相次いで売却を決断した。そこには、デジタルを軸とする社会インフラ企業へと生まれ変わるのだという経営の強い意志がある。 デジタルや環境事業という新たな成長を目指すには、祖業やかつての中核事業であっても切り離す。そして、それによって得た資金を、新たな成長分野に投下している。 実際、2020年にスイスの重電大手・ABBの送配電事業を買収し、2021年にはソフトに強いアメリカのグローバルロジックなどを買収している。