依存心が強い78歳の母親の世話を「家族代行サービス」へ。昼夜問わない愚痴の電話、お金の無心「親の面倒をみるのは当然」の態度に耐え切れず
◆お金を無心され続け 神奈川県在住の柚木文香さん(37歳・仮名=以下同)は、訪問看護師として働きながら3人の子育ての真っ最中だ。 仕事、家事、育児と多忙を極めていたところに、関西で一人暮らしをする78歳の母親から、昼夜を問わず電話がかかってきていた。愚痴や悪口など、緊急性のない暗い話ばかり聞かされ辟易した柚木さんは、2年前から家族代行サービスを利用し始めた。 契約時に44万円を支払い、通院のつきそいなどでは1回1万1000円(4時間以内)がかかる。生活全般のサポート、緊急時の対応など、母親の身の回りのことをすべて代行してくれる。 「母は依存心が強く、昔から何でも人に頼ろうとするタイプです。特に最近はお金の無心がひどくて。父が亡くなってから母もパートで働いていたけれど、退職後は年金だけでは暮らせないというので、月に2、3万円ほど金銭援助をしていたんです。 でも、送った数日後には『病院に行くから』などと理由をつけて再度要求する。もう疲れ果ててしまいました。計画的に使う気がないんです」 昔から洋服や装飾品が好きで、ほしいものは後先考えずに買ってしまう人だったという。また、家族が自分の思い通りにならないと激しく怒るが、自分は約束を破っても平気、という一面も。 「子どもの頃は自分の親しか知らないから、そんなものかと思っていました。でも結婚したら夫の両親がすごく常識的な人たちで、うちの親とはずいぶん違うと気がついたんです」
柚木さんが特に反発を覚えるのは、母親がしばしば「今まで育ててやったんだから、親の面倒をみるのは当然だ」と口にすることだという。 「もともとは老後の面倒をみる気もあったんです。でも、『自分でやるから大丈夫よ』くらいのことは言ってほしい。私は、『お母さんは自分の意思で私を産んだのだから、育てるのは義務。老後のことを見返りのように強要するのはおかしい』と、何度も言いました。でもそのたび、逆ギレされるんです」 これ以上母親につきあうと、そのストレスを家庭に持ち込んで子どもたちにも悪影響が出る。そう判断した柚木さんは、家族代行サービスを頼んで距離を置くことにした。夫も精神状態を心配し、「使って楽になるのなら」と後押ししてくれたという。 その後、母親は足腰が不自由になり、家族代行サービスに入居手続きを任せ、高齢者施設へ引っ越すことに。その際も一悶着あった。 「施設に入るしか選択肢がないことは本人も納得していたんです。でも、引っ越しを手伝いに行ったら土壇場で嫌がって……。つかみ合いになり、手を出されそうになりました。こっちは小さな子どもがいて、仕事も忙しいなか時間を作って行ったのに、『ありがとう』の一言もない」 そんな母親に最近、「彼氏」ができ、施設を出て一緒に暮らしたいと言い出しているという。 「相手も年金暮らしの借家住まいで、あまりお金はない様子。施設を出たら無心が再開するのではないかと思うと憂鬱です」 家族代行サービスのおかげで電話がこなくなり、精神的負担は軽くなったという柚木さん。だが、今後も一波瀾ありそうだ。
古川美穂
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