木に触れるワークショップ、伐倒アクティビティ…「健やかな森を守る」ユニークな取り組み[FRaU]
適切に手を入れることで、健やかな森林を保とうとする持続可能な森づくり。日本でも、自分が暮らす地域の森を元気にするための取り組みが各地で始まっています。建築やデザイン、食やレジャー、教育など、そのアクションはじつにバラエティ豊かでユニーク。その根底には、森と共生することで自然も自分たちの暮らしも豊かにしたいという思いがありました。
屋久島町(鹿児島県)
観光振興と環境保全の両立を目指し、エコツーリズムを強化。 島を囲む黒潮と高い山々が切り立つ急峻な地形による影響で、「ひと月に35日雨が降る」といわれる屋久島。 海底から隆起した花崗岩で形成されているため、屋久杉が自生する山々の根っこにあるのは土ではなく岩。降り注ぐ雨の多くは地面に吸収されず海へと流れ出て、再び黒潮の潮流で湿った気流を生み、雨雲へと変わる。
世界自然遺産に登録される屋久島は、この豊かな循環を守るべくエコツーリズムの普及に力を入れる。ただ旅を楽しむだけでなく、海山川すべてが繋がっていること、そこで育まれる生命の巡りを肌で感じ、自然環境の保全への意識を高めることが目的だ。
コロナ禍以前は年間25万人以上の旅行者が入島。以前より減少したが、今も登山客による自然破壊の問題は続いている。 登山道脇の木の根が踏み荒らされ、それが原因で土砂流出による登山道の荒廃を引き起こしたことも。さらにはトイレ周辺に埋設していた、し尿による悪臭や植生への影響から、現在は人の手でし尿を搬出している。
そんな背景から、ツアーの担い手となる高い知識を持つ公認ガイドの育成を推進し、地域の雇用創出に貢献。島民にもエコツーリズムの概念を浸透させるべく、小中学生に向けたESD教育にも本格的に取り組む。
自然環境の保全と観光振興の両立は、屋久島だけでなく世界の観光地が抱える課題。屋久島が実現を果たす日はそう遠くないはずだ。
西粟倉村 百年の森林構想(岡山県)
村の存続をかけて、山林の価値最大化に取り組む。 岡山県の西粟倉村は山林が面積の約95%を占める。村の最大の資源であるはずが、このまま林業の衰退傾向が続く場合、経済的なダメージだけでなく、村の治山治水に対する危険性も懸念されていた。