歴代最強の元公安警察官を描いて「発売即重版」! 話題のクライム・アクションマンガ『ベアフェイス』はどうやって生まれたか?《インタビュー》
――『ベアフェイス』も警察ものの変形といえますね。ただし、警察は警察でも公安警察です。 狛犬:警察を描いた作品はたくさんありますが、その多くは捜査一課や所轄の警察署が舞台です。今からそこへ参戦するのも新鮮味がないし、警察ものが氾濫しているだけに間違った描写をするのを避けたい気持ちもありました。その点、公安を描いた作品は多くないうえ、表に出ない組織なので読む側にしてもあまりイメージがわかないだろうと考えました。だからある程度自由に描ける。加えて主人公を現職の公安警察官ではなく元公安にすることで、さらに自由度を上げよう、と。 ――斑鳩の性格はどのようにして決めていきましたか。 狛犬:まずはエリートであること。だけどあまりにも完璧すぎると面白くないし、読者の方も共感してくれないと思うので、強さに差し支えないぐらいの弱点というか、警察官としてふさわしくない点を入れ込みました。「お前それでも警察官かっ!」とツッコまれるような。 ――それが人から感謝されたいという、ちょっと変わった癖(へき)ですね。斑鳩は「ありがとう」の言葉が欲しくて、しばしば相手がちょっと引くくらい感謝を強要してきます。
狛犬:警官から「助けてあげたんだから、ありがとうは?」なんて言われたら嫌ですよね(笑)。他にも「金に汚い」設定も考えたのですが、それだと警察官である必然性がなくなってしまう。医師とか弁護士でもいいじゃないか、と。警察官であるからこその警察官らしからぬ点として、これを思いつきました。斑鳩というキャラクターはここが軸になっています。 ――黙っていたら、そこそこカッコいいだけに残念です。 狛犬:取材に協力してくださった勝丸円覚さん(註3)によると、公安警察官は外見的に特徴のない人の方がいいそうです。長身だったりイケメンだったりすると人の目に留まりやすいので、かえってよくないと。だから斑鳩のカッコよすぎない、いい感じに普通な見た目がうまいことハマってくれた気がします。ちなみにモデルは『チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋』(註4)の時の西島秀俊さん。僕は人物を描くときに実際の俳優さんをイメージして描くことが多いんです。見た目そのものというよりも、あの作品でのあの雰囲気、あの演技、というふうに。でも最近は意識しないで描くようになっているので、それだけ斑鳩が自分のなかに定着してきたのかも。 ――相棒となる柏木についてもお聞かせください。 狛犬:バディものの定石に則って、相方となる斑鳩とは対称的な人物にしました。女性であること、感情豊かでよく喋ってくれる人であること。ちょっと変わった主人公と、それをうまいこと制御してくれる相棒ですね。これもまた原型イメージは『ガリレオ』(註5)なんです(笑)。斑鳩ほどではないけれど柏木もちゃんと優秀な警官なので、そこをしっかり出すように気をつけています。 ――柏木は斑鳩を若干冷めた目で見ながら根底には尊敬がありますね。でもそれを態度にはださない。程よい距離感覚が絶妙です。 狛犬:あからさまな尊敬が入ると、対等なバディではなく上下関係になってしまうから。あくまでも柏木と斑鳩は対等。そこも大事にしています。