ノーベル物理学賞 「ニュートリノに質量があった」70年の定説覆す大発見
■「片鱗さへ分かっていない」
「大宇宙は数限りないニュートリノを住まわせるが、大宇宙の中でニュートリノが果たしている役割は、その片鱗さへ分かっていない」。梶田博士の恩師である戸塚洋二博士が2008年、亡くなる前の闘病中に残した言葉です。ニュートリノはまだまだ謎に包まれています。 宇宙が誕生して間もないころには、物質をつくる粒はなかったと考えられています。粒子と反粒子が一緒に生まれては消えていく。そんな反応を繰り返していました。しかし、宇宙誕生から138億年たった今、反粒子はなく粒子だけが残り、私たち生命や星が宇宙に存在しています。なぜ粒子だけが残っているのでしょうか。私たちはなぜ宇宙に存在するのでしょうか。ニュートリノの研究は、そんな好奇心をくすぐる謎を解くきっかけになるかもしれないと考えられています。今後の研究ではどんなことが分かるのでしょうか。楽しみですね。
◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 福田大展(ふくだ・ひろのぶ) 1983年、福井県生まれ。東北大学大学院理学研究科で物理学を修了後、中日新聞(東京新聞)記者を経て現職。著書に『天野先生の「青色LEDの世界」』(講談社ブルーバックス)。