ノーベル物理学賞 「ニュートリノに質量があった」70年の定説覆す大発見
「光は粒であり波でもある」と聞いたことがあるかもしれませんが、ニュートリノも粒であり波の性質も持っています。つまり、混ざっているニュートリノ1、2、3は、波として空間を伝わります。電子型、ミュー型、タウ型のニュートリノは、それぞれこの3つの波を重ね合わせたものなのです。
もし、この3つの波の1秒間に振動する回数(振動数)が違う場合、時間がたつにつれて、重ねあわせた波が強め合ったり弱めあったりします。例えば、ギターのチューニングで使うような音叉でも、音の高さ(振動数)が違う2つの音叉を鳴らして近づけると、「ウォ~ン、ウォ~ン、ウォ~ン」と、音が大きくなったり小さくなったりを繰り返して振動する「うなり」が聞こえます。 ニュートリノの場合は、うなりが起こるとどうなるのでしょうか。例えば、ミュー型とタウ型の振動に絞って考えてみましょう。 ミュー型が生み出された瞬間は、うなりの波が強め合うときで、100%ミュー型だったにもかかわらず、しばらく時間がたって波が弱め合うと振幅が0になる。つまり、ミュー型がなくなってしまうのです。一方で、この波をタウ型のニュートリノを基準に見てみると、うなりの強め合う時間(位相)がずれて、ミュー型がなくなったときにうなりの波が強め合って、100%タウ型になっています。この現象を繰り返すことで、「ミュー型→タウ型→ミュー型」と振動するようにニュートリノの種類(フレーバー)が変わるのです。
そして、このニュートリノ振動が起きるためには、ある条件が必要です。それは、ニュートリノ1、2、3を重ね合わせた波がうなりを起こすこと。つまり、それぞれの波の振動数が違わなければいけません。数学的には、ニュートリノ1、2、3の「質量の差が0ではない」ことが条件です。つまり、ニュートリノ1、2、3が質量を持ち、かつ、それぞれの質量が異なる必要があります。だから、ニュートリノ振動を観測したことで、ニュートリノが質量を持つ証拠になったのです。