世界初プロダンスリーグのビジネス戦略 D.LEAGUE運営に聞く
ダンスの世界でさまざまなビジネスモデルを
しかし、理想だけではプロは成り立たない。いかにビジネスとして運営していくつもりなのか。カンタロー氏は熱く語る。 「もともとダンスの世界ではC to Cに近い形でダンサーと生徒がレッスンを行うことで得られる対価がほとんどでした。その間にBとしてスタジオ運営が入ってC to B to Cになり、スタジオがダンサーに『先生どうぞ、生徒は僕らが集めます』というビジネスモデルが主流でした。あとは芸能で考えると、バックダンサーだったり振付師だったり。僕が17年前にダンスイベントを始めたとき、B to Bに切り替えたんです。企業が協賛、もしくは僕が主催するイベントをメディアという形で活用していただけるようにしてダンサーの人数を集めた。出場側からお金をいただく、みたいな発想。フリーペーパーのイベント版みたいな形ですね。若い子がたくさん集まりますよ、そこに広告を打ちませんか、もしくはブランド認知しませんか、と。それで一つのモデルはできたのですが、ブランド認知だけだとどうしても長くは続かないんです」 悪戦苦闘が続く中、SNSが発展したことによって、D.LEAGUEを根付かせる土壌ができてきたという。カンタロー氏は続ける。 「ダンス動画をいろいろなところで目にする機会が増え、ダンサーの注目度がアップしてきたので、それに対し広告価値を作ることができる。それを増強するためにD.LEAGUEという場は最適なのではと。リーグで人気になったダンサーからタレントやアーティストになる子が出てくるかもしれないし、リーグの中だけで大成功を収める子も出てくる。オリンピックで活躍する子も出るかもしれない。そこはスポーツのマーチャンダイズと変わらないので、D.LEAGUEとしての放映権もあるだろうし、グッズ販売、入場料、いろいろなビジネスモデルをダンスの世界でいよいよ展開できるのかなと思います」
ポイントはコンテンツ力を高めること
平野氏も相槌を打つ。 「いままでの日本のプロスポーツは競技者がそのままその業界の運営者になっていくことが多かったのですが、競技のことがわかってもその競技を使ってプロとしてどう経営していくのか、という問題がある。サッカーのプレミアリーグも野球のメジャーリーグも経営者は経営専門の人がやっている。私はずっと経営をしてきたので、参加企業の経営者の皆さんともども、ダンスという競技をいい意味で商品として見たときに最大の付加価値をつけてどう打ち出していくかという視点が持てます。アメリカやヨーロッパの成功例をみると、基本的には協賛、放映権、グッズ販売、入場料、この4つが柱です。一番のポイントはコンテンツ力を高めること。それによって入場者が増えグッズも売れ放映権も高くなる。まずはコンテンツ力をどう高めるかをきちんと戦術に落とし込んで組織をつくって、それをバインディングしていく。3年、5年、10年先を見据えていきたいですね」 プロ化にあたってはダンサーの年俸保証を各チームにお願いしているという。それによって、たとえばこれまでアルバイトに費やしていた時間をダンスの練習に当てられるようになる。これから始まるD.LEAGUEが、エンターテインメントとスポーツの世界に新風を吹き込むことができるか。新たなスターは生まれるのか。見守っていきたい。 (取材と文:志和浩司)