世界初プロダンスリーグのビジネス戦略 D.LEAGUE運営に聞く
ダンサーの境遇と地位向上させたい
D.LEAGUE発足の動機としてはダンサーの地位向上があったと、カンタロー氏は明かす。 「これまで、ダンサーがなかなか表舞台に立てない苦しみがありました。大会を運営しても一般に認知されるには至らない。それが今回、芸能プロダクションLDHに参画し新しいダンスプロジェクトを立ち上げる流れの中で、『踊ることができる経営者がいる』とEXILEのHIROから紹介を受けたのが平野さんだったんです」 CEOを務める平野氏はダンサー経験もあり、ダンサーの地位向上に関心があった。カンタロー氏からD.LEAGUEの構想を聞いたとき、ぜひとも、と話に乗ったという。 「私は日本でただ一人の踊る上場企業経営者(笑)。ストリートダンスを毎週レッスンし、実際に舞台に出て踊りもします。われわれ世代はダンスというと少々ちゃらついたイメージが強いのですが、娘が中学に入るときダンスを始めたのがきっかけで私もダンスをすれば反抗期の娘とも少しはコミュニケーションがとれるかなと。それで、気づいたらハマッていました。本業は人材派遣会社の経営ですが、みずから感じたダンサーの境遇や置かれた立場を考えると、もっとダンスをスポーツでありエンターテインメントとして、地位向上していければと思いました」
エンタメとスポーツの融合点目指す
D.LEAGUE発想の原点を、カンタロー氏は説明する。 「物心ついたとき海外にはプロサッカーのリーグがあり、中学のときJリーグが開幕。ところが自分がプロダンサーになろうと思ったとき、どこからがプロなのかよくわからない。テレビ番組に出たダンサーが有名になることはあっても、継続的に活躍できる場所はない。プロとしての自己承認欲求を満たす場所がなかったんです。そんな中、D.LEAGUEの発想が芽生えました。エンターテインメントでありつつスポーツのど真ん中にいるという融合点が、ダンスならできるのではと。サッカーや野球はピュアスポーツでエンタメになかなか寄れない。ダンスなら音楽もからみ、エンターテインメントやアート、カルチャーにも寄れる。2024年のパリ五輪でブレイキンが追加競技として初採用が決まったけれど、エンタメとスポーツの新しい形と選択肢をD.LEAGUEが提起できるのではと思います」 平野氏はうなずきながら、競技という部分へのこだわりを説明する。 「リーグを作ることでどのチームが一番うまいか、人気があるかを明確化できる。野球ならいまは福岡ソフトバンクホークス、サッカーなら川崎フロンターレでしょう。プロの世界において現時点でどちらがうまい、強いというのがわかることは、ダンス界全体の底上げにつながるし、競うことによって認知される部分もある。そういった意味では継続的にダンサーがプロとして活躍できる場を作り、リーグの中でNo.1が明確になっていくことが最大の魅力だと思っています」