更年期で自分も周りも消耗しないで――産婦人科医が語る、健やかに生きるための更年期対策
本当に更年期症状に効くモノとは?
H:友人たちとの間では、「更年期の不調に効く」とウワサされるモノが話題に上がります。プラセンタ注射、CBDオイル、腟マッサージにエクオール……いろんなものがあって、何が効くのかわからないんですが。 高尾:はやりものがいろいろあるね(笑)。まずは普通に婦人科に相談してよ、と思いますが、その中だと唯一、信頼あるエビデンスがあるのは「エクオール」ですね。 M:エクオールとは? 高尾:まず、エクオールの前に「エストロゲン」について。女性は、人生の約40年間、卵巣から分泌される「エストロゲン」という女性ホルモンによって心身を守られています。30代の後半からエストロゲンの分泌量は減っていき、更年期では急激に減少して、閉経直前に乱高下。閉経後は、なんと男性よりも低い値で一定になります。エストロゲンが減少することで体にさまざまな不調が起こります。 更年期で減ってしまうエストロゲンに似た働きをしてくれるのが「エクオール」という成分です。大豆イソフラボンを含む大豆製品を食べると、腸内細菌が「ダイゼイン」という成分を「エクオール」へと変換し、体内でエストロゲンのような働きをするんです。 M:なるほど。大豆製品を食べれば、エストロゲンに似た成分を腸内で作れるんですね。 高尾:そうです。ただし、腸内でエクオールに変換させるエクオール産生菌を持っているかどうかには、個人差があるんです。検査をしてみて、エクオール産生菌を持っていれば大豆製品をせっせと食べる。持っていなければ、サプリメントを取るという選択肢もありますね。
更年期症状に苦しむ女性への接し方
H:小学生の息子は今10歳でまだ思春期前なのですが、すでにケンカをよくするようになっていて……。何か指摘すると息子が「うるせえ」と反抗して、私もキレて止まらなくなってしまいます。 高尾: 40歳で子どもを産んで、子どもが10歳になるとお母さんは50歳。これは「思春期の子どもと更年期の母親」、一家の中に大変な人が2人もいるという状況ですよね。子ども心にも「お母さんの調子が悪そう」と思いますし、それを見守るお父さんや他の家族も気を使います。 H:母親自身も、自分の不調に気づきづらいのが更年期だと思うんです。例えば、客観的にパートナーの不調に気づいている男性が、当人に声をかけるとしたら、どんな言い方がいいと思いますか? 高尾:旦那さんから見て、奥さんの調子が悪そう。でも、奥さん本人は更年期症状だとわかっていない、という場合ね? そうですね、「体調が悪そうに見えるから、一度専門家に相談してみたらどう?」とか、もう一つは、「調子が悪そうだから、何か僕にできることはない?」ですかね。 M:ああ、そういう言い方なら、イライラしていても素直に聞けそう(笑)。「更年期みたいだから病院へ行ったら」って言われたらブチギレちゃいます。職場でも、そういった気遣いのある声かけだと良さそうですね。 高尾:女性のイライラって、どうしても男性に「察して」とか「空気を読んで」とか、以心伝心を求めて裏切られるというパターンから起こりますよね。だから男性も、「具体的に」できることはないか、という聞き方をするといいと思います。