更年期で自分も周りも消耗しないで――産婦人科医が語る、健やかに生きるための更年期対策
30代から更年期の可能性も…早めの対策を
編集者M子(以下、M):40代のはじめに閉経してしまうという人もいるんでしょうか? 高尾:いますね。その場合は、30代から更年期が始まっているということになります。 M:そういう人は増えているんでしょうか? 高尾:それはないです。昔から早く始まる人もいたし、遅い人もいた。平均はほぼ変わらないんです。私たちの親世代は専業主婦が多かったですが、今は女性を取り巻く環境や求められる役割が変わって、「更年期」が社会の中で目立ってきたということはあると思います。 M:出産経験の有無は、更年期に関係がありますか? 私は子どもがいないんですが、出産をしないと更年期が早くなるとか……。 高尾:それは関係ないですね。出産の有無よりも、環境のほうが影響します。初潮が遅かったから閉経も遅いということもないです。ただし、喫煙習慣がある人は、閉経が早くなる可能性があります。タバコによって、卵巣機能が早く終わるんです。とにかく40代に入ったら、閉経が近づいている、更年期に入っているかもしれないと考えておくことですね。自分は58歳まで生理があるかも、ではなくて、もしかして45歳で閉経するのかも……と思えば、早いうちから対策ができます。
更年期を苦しめる睡眠時間の不足
H:更年期への対策は、具体的に何をしたらいいのでしょうか? 高尾:生活習慣の見直しです。何よりも睡眠時間の確保。眠らない人ほど、更年期症状は重くなる傾向にあるんです。まずは自分の生活のリズムを見直して、適正な睡眠時間を確保してほしいです。 動悸やほてり、手足の冷えなど、こうした更年期のサインは万国共通なんですが、欧米の女性と比べて日本人女性のほうが、これらに加えて「更年期うつ」といったメンタルの不調が目立つ。日本の女性にメンタルの不調が多い理由を探してみると、睡眠時間が短いことなのではないか、と思うわけです。例えば7時間眠るべきところを、毎日6時間半しか確保できないとします。この30分足りない状態の積み重ねが、実は「睡眠負債」となって体に負担をかける。おそらく受験勉強をしていた10代の後半から睡眠不足になっているという人が多いと思います。