開幕1軍入りアピール競演に成功した西武ドラ1宮川と中日ドラ3岡野は社会人の東芝時代ダブルエース。それぞれの思いを胸に競い支え合う
本人も「今日は変化球でストライクを先行させてリズムを作ることをテーマにした。カットボールが良く決まって自分のテンポで投げられていた。ストレートは多少甘くなった場面もあったが、両方のコースにしっかりと思い切りよく投げきれたことで、何とか最少失点で抑えられた」と納得していた。 投球に入る前に一度、しゃがみこむように腰を折るルーティン。「ヒップヒンジ」と呼ばれる股関節トレーニングの動きだが、「軸足で地面をしっかりと押す感覚を作るために」と、自粛期間中に取り組み、今回、ゲームで使ってみたという器用さがある。 走者を背負い、二段モーションが使えなくなると、若干、球威が落ちる。制球や配球の甘さを球威でカバーするタイプではないので球種を読まれると集中打にもつながってしまう。だが、そのあたりは本人もわかっていて、「途中から真っすぐに(ヤマを)張られた。3連打を打たれたところは長打を警戒して慎重にいきすぎてカウントが不利になった」と反省していた。そして見えてきた開幕ローテー入りについては「まだまだ結果が必要だと思う。手応えというより、今日の反省を含めてさらにいい投球を目指して、必死に新人らしく思い切ってやっていきたい」と、ポジティブに語った。 宮城県石巻市出身の岡野は、聖光学院高時代にエースとして3年時に春夏甲子園に出場、センバツではベスト16に進出した。ちなみに、この年、春夏連覇をしたのが阪神の藤浪晋太郎と西武の森がバッテリーを組んでいた大阪桐蔭である。高校日本代表メンバーに、大谷翔平、藤浪らと共に選ばれ、青学大を経て東芝へ進む。実は、2018年にドラフト解禁されており、本人もプロ志望だったが、指名漏れしている。当時のスカウト評は、「完成されているがプロでやるには力強さが足りない」というもの。だが、東芝では、背番号「19」をつけ「勝てる投手」として重宝された。1年かけてスピードを磨き、中日にその成長度を認められて3位指名となった。 その同じ東芝で、背番号「18」をつけダブルエースとしてチームを引っ張ったのが、岡野の1年後輩となる宮川だった。岡野がコントロール主体の完成型なら、宮川は剛球主体の未来型。150キロを超えるポテンシャルは、プロ向きと言われていたが、試合での安定感はなかった。東芝首脳陣の信頼度は、岡野が上。宮川は、いい時はいいが悪い時は止まらないというタイプである。それもそのはず投手に本格転向したのは、東海大山形高から上武大へ進学してからだった。まだ経験6年。だから宮川は、先輩の岡野を尊敬していて、いつも相談を持ち掛けアドバイスをもらってきた。 宮川は、今回がドラフト初解禁だったが、指名漏れすることなく、佐々木朗希をクジで外した西武が“外れ1位“で単独指名した。 社会人時代はエース格だった岡野が、1年指名漏れしての3位指名で、後輩の宮川が外れ1位指名。それぞれの思いを胸に1歳違いの2人のエースは、プロとして同じスタートラインに立った。