日本の体験格差と同じ…インドの貧困家庭に育った青年がNYでプロダンサーになるまで
日本は発展している印象があるから意外ですね
日本の人にとっては、インドのボリウッド映画になじみがある。筆者も『ムトゥ 踊るマハラジャ』を映画館に見に行ったし、近年はナートゥダンスが人気に。だが、様々な舞踊が身近なインドでは、ダンスは神への祈りのようなもの。ボリウッドダンサー以外、プロダンサーの例がないそうだ。 「ボリウッド映画は、ダンサーというより、俳優の仕事。ボリウッド作品の場合は、5曲ぐらい踊れたらいい。プロのボリウッドダンサーと、俳優が一緒に踊る。歌はリップシンクでかぶせれば大丈夫なんだけれども、踊れなければスターではないんですよ」 日本でも、体験格差や経済的な格差は広がっている。裕福な子供には、習い事としてバレエが人気だ。他方、夏休みに食べるものに困ったり、スポーツ活動のユニフォームが買えない子がいる。 「知らなかった。意外ですね。日本は発展している印象があるから。踊りに関しても、パリオリンピックのブレイキンで金メダルの女子がいる。男子もかなり健闘していて、そういうのを見ていると、施設や練習できる場所もあるんだろうって。 インドは、場がないわけですよ。僕らはストリートのセメントの上とかで練習をしていて、初めてちゃんとしたスタジオに入ったときに、フロアが良かったんですよね。それが普通なんだって驚いた。YouTubeとか見ながら、独学で勉強したのですが、そうすると怪我も多いんです」 ◇スタジオの床でダンスを踊れることは「普通」ではなかったというマニーシュさん。彼は体験格差の渦中にいながら、様々な幸運をつかんでプロのダンサーになった。しかしそれは壮絶な努力と、様々な出会いがあったからこそなしえたことなのだ。 ではNYでダンサーになってからは順風満帆だったのだろうか。インタビュー後編「インドの貧困家庭からNYでプロのダンサーになった31歳が清掃アルバイトを続ける理由」では、ダンサーになってからの話を聞いていく。
なかの かおり(ジャーナリスト)