「分からないから、決めていいよ」と全て妻に任せる夫。パートナーとの距離感やすれ違いに悩む夫婦の物語を描いた漫画5選【書評】
無職の夫に捨てられました
離婚は、必ずしも不幸の始まりとは限らない。家庭内で抱えていた不満やストレスから解放され、自分自身の人生を再構築することができた家族もいる。『無職の夫に捨てられました』は、そんな一例をリアルに描いた作品だ。
主人公は、腰痛持ちで無職の夫と小学生の息子との3人暮らし。パートと内職を掛け持ちして懸命に働くが、それでも家計は赤字続き。精神的にも追い詰められる中、主人公は家族のために奮闘するが、無職の夫は非協力的で、感情が高ぶるたびに「離婚する!」と口にし、何度も家出を繰り返す。 結婚して9年、子どもが生まれてからの8年間で、夫は3度無職を経験。そのたびに主人公は家計を支え、育児や家事を一手に引き受けてきた。そして今回、夫から聞かされる「離婚する」の言葉も、いつもの感情的な発言だろうと思っていた。しかし、どうも様子が違い、本気らしいのだ。 子どもがいる家庭での離婚は、親だけでなく子どもにも多大な影響を与える。それでも、子どもと一緒に新しい幸せを見つけるためには、親自身が健やかであることが大前提。時には問題の解決策として前向きに検討することも必要だろう。ただ現状に耐えるだけではなく、自分自身や子どもの未来に向けた選択肢を広げていくことが最善の道となることもあるはずだ。 これまで支えてきた夫に捨てられたことは、主人公にとってつらい出来事だったに違いない。そのつらさを乗り越え、息子とふたりで幸せになった主人公の姿は、同じような状況に悩む人に勇気と希望を与えてくれる。ぜひ本書を手に取り、彼女が見つけた新たな幸せの形を確かめてほしい。 夫婦の悩みや離婚を描いた、苦悩と希望が交差するリアルな人間ドラマの数々。年末年始に一気読みしてみてはいかがだろうか。 文=ネゴト / 糸野旬