「分からないから、決めていいよ」と全て妻に任せる夫。パートナーとの距離感やすれ違いに悩む夫婦の物語を描いた漫画5選【書評】
主人公のさくらは、夫のたくやと愛し合って結婚し、長男のゆうとが生まれて幸せの絶頂にいた。しかし、その幸福は長くは続かない。家事や育児も「手伝うことがあればやるから言って」とのらりくらりかわす夫は、結婚後も独身のときのように飲み歩き、どこまでも自分の生活を優先させていた。 一方で、さくらはワンオペで家事と育児を抱え込み、疲弊していく。意を決して夫に辛さを訴え、育児に協力してほしいと頼むも、返ってきたのは「俺がいてもあんまり変わらなくない?」という冷たい一言だった。 育児の孤独や負担に押しつぶされそうになっている中、一番信頼すべき相手から一切理解してもらえない状況はどれほどつらいものだろうか。絶望したさくらは、一度は別居の道を選ぶのだが――。 本書は、ワンオペ育児の現実と、夫婦間のコミュニケーションの難しさをみごとに浮き彫りにしている。さくらと同じような境遇で悩む女性はもちろん、子どもを持つ男性にも手に取ってほしい作品だ。家庭内のコミュニケーションや役割分担についてあらためて考える、良い機会となるだろう。
離婚まで100日のプリン
『マンガでわかる 離婚まで100日のプリン 決別or再構築、どうしよう?』は、100日間で離婚までたどり着く女性の悲喜こもごもを描いた一作。ゆるっとした可愛らしいタッチとは裏腹に、その内容のリアルさやエグさがSNSで大反響を呼んだ。
まず注目したいのが、登場人物たちのビジュアルだ。著者のきなこす先生は、フリンするプリンという語呂が気に入ってプリンを主人公に据えたと話す。主人公の甘井プリ子も、夫のプリ彦も、見た目はふるふるとした質感が愛らしいプリンそのもの。ふわふわした癒しの雰囲気がたまらない。 しかし、物語が進むにつれてその雰囲気は一転。「不倫」「略奪」「離婚」といった生々しいテーマが物語の主軸に据えられているのだ。一見するとマスコットキャラのような愛らしい外見のキャラクターたちが、徹底的に大人の世界の泥沼劇を演じるギャップが読者に衝撃を与える。 作中では、離婚までの100日間が「離婚〇日前」というカウントダウンとともに4コマスタイルで描かれていく。プリ彦からプリ子へのモラハラ、DV、そして同僚との不倫発覚――。胃がズーンと重くなるような生々しい展開が続くが、登場人物たちのビジュアルそのものが癒し効果を持つため、たとえ内容が重くとも疲れすぎることなく読み進められるのもこの作品の魅力のひとつだ。 甘くて可愛いスイーツキャラクターに癒されながらも、その背後に広がる複雑な愛憎劇に心を揺さぶられる――。そんな独特の読後感を味わいたい人にぜひ手に取ってほしい作品だ。