マルコム・グラッドウェルが語る『ティッピング・ポイント』の25年後
『ティッピング・ポイント:いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』で2000年にデビューして以来、ミリオンセラーを連発してきた米出版界の鬼才、マルコム・グラッドウェル。 【画像】いずれもベストセラーになったマルコム・グラッドウェルの著書 2024年、デビュー作から約25年が経つのを機に、「改訂版」となる新作を出版した。25年前と変わらないこと、変わったことは何なのか。この間、新たに生じた社会問題をどう見ればいいのか。英紙「ガーディアン」が聞いた。
25年後のリメイク
マルコム・グラッドウェルは、自身のデビュー作にしてベストセラーとなった『ティッピング・ポイント:いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』に加筆するよう親友ジェイコブ・ワイズバーグに勧められたとき、それが名案なのかどうか確信を持てなかったという。 「まるで人生の終わりにする仕事のように思えたんです。ロックバンドがグレーテスト・ヒッツ・アルバムを出したり、アコースティック・バージョンを出したりするみたいにね」と、グラッドウェルは笑いながら話した。 これはいいたとえだ。グラッドウェルは、作家のなかのロックスター的存在なのだから。道を歩いていて人々に気づかれるほど有名なジャーナリストは、グラッドウェルのほかにはそういない。彼の容姿は目立つ。小柄で痩せていて、髪はボリュームたっぷりの61歳だ。 どこか少年のような雰囲気を持っていて、それはニューヨーク北部の自宅から私にビデオ通話で話しているときにも伝わってきた。画面越しの彼は、黄色いTシャツにグレーのフリースのジップアップという服装だった。 グラッドウェルとワイズバーグは数十年もの付き合いになる。ワイズバーグは、オーディオブック出版社のプーシキン・インダストリーズのCEOだ。同社は、グラッドウェルの大人気ポッドキャスト「リヴィジョニスト・ヒストリー」を制作している(リヴィジョニストとは「修正主義者」の意)。ワイズバーグがヒットを生み出す才能にあふれていることは明らかだ。 それに、グラッドウェルの不安はすぐに吹き飛んだ。というのも、改めてデビュー作に向き合ってみると、ただ単に加筆するだけで終わらせたくないという気持ちがわいてきたからだ。それどころか、グラッドウェルは新作を書き上げたくなったのだった。これは『ティッピング・ポイント』のアコースティック・バージョンなどではない。むしろ、リヴィジョニスト・バージョンと言えるだろう。