「売れても売れなくてもいい。とんねるずで歌いたい」――木梨憲武、60歳から「もっと遊ぶ」宣言
木梨はアドリブで周囲を驚かせるが、繰り出す瞬間、不安はないのだろうか。 「怖くないです。アドリブのほうが面白いと思ってるから。台本通りにやったすばらしさもある。だけど、『俺はこう思うんだけど』が出てきたら、こっちはこっちで正解。どっちが正解かは分からなくて、行ったり来たりするんですよ」 「テレビ局があって、演出家やディレクター、放送作家の方がいて、スタッフ、カメラマン、大道具、美術、すごい人数がいて。どうぶっ壊れても対応してくれるチーム。それがわれわれの時代のスタートでしたから」
僕のメンタルトレーナーは成美さん
冠番組のヒットで「われわれの時代」を築いた。コンビ結成から40年以上が経つ。テレビの変化をどう感じているのか。 「私たちのやってきたことは、コンプライアンス的なことも含めて、『これ駄目、控えてください』『スポンサーさんが駄目と言ってます』と。それが非常に多いというのは聞いてます。しょうがないですね。喜んでくれる人もいれば、『あんなことやっていいのか』って言われながらずっとやってきましたから。それが本格的に駄目になってきた。やりにくいなっていうところには行かない。みんなが快く受け入れてくれて、面白いと思ってくれるところでやらしてもらいます」 自由に動ける場所をすぐに見つける。今はテレビやラジオ、ネット配信番組に出演するほか、マツコ・デラックスやミッツ・マングローブ、宇崎竜童、所ジョージ、佐藤浩市、中井貴一など、さまざまな才能とコラボレーションして曲を出している。アート活動も本格化し、大規模な個展が国内外で巡回中だ。 「表現の仕方は違うけど、俺の中ではどれも同じで。『こういうのをやりたい』と言ったら、大勢の人が関わって、その作品にみんなで向かっていく。それがエンターテインメントなのかな」
年を重ねても、どんなジャンルでも、チームを盛り上げるスタンスは変わらない。 「みんながそこで笑ってないと。ただテーブルの前で会議やってても、俺はその現場が一つも好きじゃない。『どうした、みんな。静かだね。やめる? 中止?』とか言ってね。差し入れだって、広げた瞬間、『うわー、何これ』って。みんなが一つになる場面ですから」 楽しく明るい「木梨憲武」を演じている意識はない。落ち込むこともなく、悲しさがないから悲しい絵は描けないと語る。妻の安田成美から見た木梨は、「盛り上げ隊長のお調子者」。家でもずっとしゃべっているらしい。 「ペラペラすればするほど、子どもたちが引いていきます。だからあえてペラペラする時もあります。引かせて散らすっていう技なんですけど。俺が成美さんとしゃべりたいから」 「完璧な人なんて、誰もいないんでね。人のことは分かるんだけど、自分のことは分かんない。近くにいる人が自分についていろいろ言ってくれるのが、図式としては非常にいい気がする。僕のメンタルトレーナーは成美さんだと思ってるんで、整えてもらいながら」