児童書大健闘、小学館の様々な取り組み
文芸書とロングセラープロジェクト
文芸はどういう状況なのだろうか。 「児童書に比べれば部数は小さくなりますが、例えば『ぎんなみ商店街の事件簿』が23年9月にBrother編、Sister編とそれぞれ6000部刊行されて、各7万5000部、累計15万まで行っています。それぞれの登場人物の目線から入っていくというもので、2冊一緒に買ってくださる方が多いですね。同書の電子版は12月に合本を出します。以前、小説誌『STORY BOX』に連載されていた時についていたイラストが紙版にはついていないのですが、電子版にはつけます。合本でなくそれぞれの版は既に出ているのですが、弊社の文芸書の電子版としては非常によく売れています。 それから注目作としては11月8日刊行された呉勝浩さんの『Q』ですね。重厚な672ページの大作で定価も2420円ですが、今後いろいろな文学賞にもノミネートされていけばよいなと思っています。 小学館にはいま、ロングセラープロジェクトというチームがあるのですが、書店さんと協力していろいろな試みをしています。例えば『銀座「四宝堂」文房具店』という文庫が2022年10月に5000部からスタートし、1年たって11刷5万6000部まで行っています。1年間で約10倍になったのですね。その第2巻目が2023年9月に出ましたが、これは初版2万部でスタートし、4刷3万部まで行っています」(同)
『ミステリと言う勿れ』に続き『葬送のフリーレン』大ヒット
コミックスについては福本和紀ゼネラルマネージャーに話を聞いた。 「23年前半は厳しいスタートでしたが、9月くらいから映像化作品のヒットが相次ぎ、最終的には昨年並みの売り上げになるのではと思います。 『ミステリと言う勿れ』が映画化され、『葬送のフリーレン』のアニメが始まったこと、さらに『薬屋のひとりごと』のアニメも好調です。この作品の原作は他社から出ているのですが、小学館からコミックスが出ており、よく売れています」 コミックはデジタルの伸びが大きいとよく言われるが、小学館の場合、2023年10月に組織変更を含めた対応がなされたという。 「以前はデジタルについては書籍も雑誌も含めてデジタル事業局という部署で扱っていたのですが、そこの営業部門が1年前にマーケティング局に移管されました。そしてこの10月には、デジタル部門がジャンルごとに分かれて、紙の営業・宣伝部門と合流し、書籍事業室、雑誌事業室、コミック事業室となりました。その結果、紙もデジタルもコミックは、営業や宣伝も含めてコミック事業室で見ていくことになりました。 2年ぐらい前に、デジタルと紙の売り上げが逆転しているし、デジタル売上の中でコミックの占める割合が90%を超えるという状況で、紙とデジタルを分けている場合ではないという、社としての判断だと思います。 そういう中で『葬送のフリーレン』が話題になって、久々に紙のコミックスの第1巻が累計で100万部を突破したのです。2020年8月に初版8万部でスタートしてそこまで行ったのですね。これは小学館では荒川弘さんの『銀の匙 Silver Spoon』以来、8年ぶりぐらいかなという感じです。当時と比べてデジタルの売れ行きが伸びていますから、紙のコミックスが100万部という価値はかなり上がってるのではないかと思います。『葬送のフリーレン』はデジタルもかなり読まれています」(福本ゼネラルマネージャー) 紙とデジタルがコミック事業局に統合されて、どんな取り組みがなされているのか。 「2023年9月・10月に『漫祭(まんさい)!』というデジタルフェアを開催しました。各ストアで無料試し読みを行って露出を増やしたのです。また12月からはリアル書店で『小コレ!』というフェアを行いました。これはもう13年ほど続いているフェアです。これら2つのフェアを効果的に連携させて、作品の認知度を高め、デジタルも紙でも売り上げを上げていこうという取り組みです」(同) 映像化について言えば、小学館のコミック原作の映像化はこの1年で40本以上。原作が大きく動いたものとそうでないものがあるが、映像化をきっちりと売り上げにつないでいくのが課題だという。