デジタルシフト強める文藝春秋がめざすもの
2023年、文藝春秋は大きな組織再編を行った。ニュースやノンフィクションを文藝春秋総局に部門統一し、『週刊文春』と文春オンラインの特集班を統合した。その狙いは何なのか。(編集部)
文春オンラインと『週刊文春』特集班を統合
文藝春秋は2023年7月に大きな組織改編を行った。それまで『週刊文春』特集班と文春オンライン特集班が別々にスクープを狙っていたのを合体させた。またデジタルコンテンツのマネタイズを促進する文藝春秋ビジネス部も新設した。 長らく文春オンラインの編集長を務めてきた文藝春秋総局の竹田直弘局長に話を聞いた。 「現在、文春オンラインは月間4億~5億PV、ユニークユーザーは約4000万人です。出版社系のニュースサイトでは2位を倍以上引き離して圧倒的に読まれているのですが、ただPVだけを競い合っている時代は終わったかもしれません。収益を上げるためには別のことも考えていかなければならないという新たなステージに入っています。 ニュース部門のデジタルシフトはかなり進んでいて、紙の『週刊文春』の発売前でもスクープ記事は文春オンラインやサブスクサービスの『週刊文春 電子版』に先に出してしまう。完全にデジタルファーストですね。『週刊文春』編集部内にデジタル担当デスクが置かれ、情報をいつ、どこから、どのように発信するか、そのつど考える体制になりました。記事の出し方がウィークリーでなく、事実上デイリーになったと言えます。 『週刊文春 電子版』の位置づけも、以前は、『週刊文春』の記事が発売より1日早く読めるというメリットをうたっていましたが、今は電子版だけに載る記事も増えています。電子版は月額2200円のサブスクモデルですが、利益率が高いので、そこに集客していくというのが全体の目標になっています。 ひとつの事件を継続的に追っていくにはデジタルが向いているし、ヒットしたテーマはいろんな角度から、音声や動画も活用して報じていく。旧ジャニーズ問題や宝塚問題などの報道を通じて、読者が何を求めているのかを常に分析しています。取材記者のトークライブや会員限定のイベントなど、電子版独自の試みも増えてきました」 紙の雑誌と文春オンラインや電子版をどう連動させ、コンテンツを出していくか。紙だけの時代とは全く違う取り組みになっているという。 「文春オンラインを社全体のハブという位置づけにしたいと思っています。オリジナルの読み物も配信しており、最近は『文春読書オンライン』というコーナーを作って自社出版物の紹介記事を、文芸、ノンフィクション問わず書籍の編集者が自分でアップできるようにしました。文春オンラインは日本トップクラスの読者数を持つメディアになったので、メディア単体の収益にこだわりすぎるのではなく、書籍のヒットを促すサポートも積極的にやろうと考えています。文春オンラインには社が力を入れているコミックのページもあります。スクープは大事ですがそれだけではなく、文藝春秋全体の総力戦になっている感じがします」(竹田局長) この1年、文春オンラインで反響の大きかった話題は、旧ジャニーズ問題や宝塚問題、木原事件などと並んで、広末涼子さんの不倫騒動だったという。スピーディーでドラマチックな展開をたどったところがデジタル向きだったと言えるかもしれない。 最近は『週刊文春』記者がオンラインでトークなどを行う機会が増えた。週刊誌記者がそんなふうに表に出て取材の裏話を語るという機会は昔はなかったが、今は良い記事を書いていれば収益が上がるという時代ではなく、記者にもいろいろな能力が求められているという。