児童書大健闘、小学館の様々な取り組み
小学館の児童書が大健闘だ。『図鑑NEO』が好調なほかに、『大ピンチずかん』などもヒットしている。そのほかコミックスや文芸、さらにオーディオブックなど現状を探った。(編集部)
『図鑑 NEO』で発揮された小学館の底力
小学館の児童書が好調だ。2023年も、前年を超える売り上げを保っているという。その中でも特に好調な『図鑑 NEO』について、第三児童学習局の青山明子チーフプロデューサーに話を聞いた。 「『図鑑 NEO』は2023年2月に新関連シリーズ『NEOアート』が立ち上がり、6月に『図鑑 NEO[新版]人間』、そして11月に『図鑑 NEO 音楽』を刊行しました。 『図鑑 NEO[新版]人間』は7万部でスタートし約半年で10万部に至っています。カバー裏に二次元コードが付いていて、人体の計20パーツの説明が音声と動画で見られます。これはNEO初の試みです。 小学館の育児メディア『HugKum(ハグクム)』と共に『図鑑 NEO』が『自由研究コンクール』というのを行ったのですが、ある子が、『図鑑 NEO[新版]人間』を読んでお母さんが入院、手術をした臓器を調べたと自由研究に書いてきたのです。ああこんなふうに活用してもらえたのだと嬉しく思いました。 11月22日に発売された『図鑑 NEO 音楽』は、300種以上の楽器を紹介しているのですが、これも二次元コードでそれぞれの楽器の音源が聞けます。カバー裏には時価数十億ともいわれる伝説のヴァイオリン、ストラディヴァリウスの原寸大の写真が掲載されているのですが、その音源も聞けます。 図鑑に掲載した楽器の写真はほぼ撮り下ろしで、弊社のスタジオに運び込んで撮影しました。一つひとつ撮影し演奏の音源を録っていく作業に3年以上費やしました。民族楽器は演奏できる人も限られており、その人に来ていただいて演奏してもらいました。ちょうどコロナ禍の頃で、多くの苦労がありました」 最近は、『図鑑 NEO』のコンテンツを、違う形で再構成する試みも増えているという。 「例えば小学館100周年に合わせて『ずかんミュージアム銀座』という、『図鑑 NEO』に掲載された一部の生き物をデジタル技術を使って見せる美術館を2021年7月6日から2023年9月3日まで開きました。コロナ禍で大変でしたが、子どもたちからたくさん手紙をいただき、スタッフから『作ってよかったね』という声があがっています。 それから4月28日から9月3日まで、月をテーマにした『NEO月でくらす展』というのも日本科学未来館で開催され、約10万人が訪れました。これは今後、小学館のS-PACE(スペース)というメタバース空間でも見ることができるようになります。 また8月16日から24日にかけては千葉県のイオンモール幕張新都心で『小学館の図鑑NEOたんけん昆虫フェス』を開催し、9日間で1万人以上が訪れました。 『図鑑 NEO』には『NEOぷらす』というシリーズがありまして、その『くらべる図鑑』というのが非常によく売れているのですが、2021年の夏から毎年、春と夏に展示をやっています。これは各地を巡回していますが、2023年夏は郡山のふれあい科学館で行いました。 さらに根強い人気の『図鑑 NEO 恐竜』については、福井県立恐竜博物館が23年夏、リニューアルしたのを機に、『展示図録ジュニア版』を作りました。 タカラトミーとの協業では、ライオンの形をしたタッチペンで例えばキリンのところを触ったらキリンの情報をおしゃべりしてくれるおもちゃを一緒に作ったりしました。 『図鑑 NEO』は信頼ある内容の書籍を出すと一方、そのコンテンツをどう活用していくか、両輪で考えています」(青山チーフプロデューサー) 今後の刊行計画はどうなっているのか。 「2024年にも数冊刊行予定です。動画などの撮影や、編集も着々と進んでいます。デジタル施策は確実に、もちろん本書の中身に関して手を抜かないというのが基本です」(同)