【痔は自力で治せる?】専門医が教える、自宅での治し方、市販薬・漢方薬の選び方
痔は、病院へ行かないと治らないのでしょうか? 恥ずかしくて病院へ行きづらい肛門トラブル。排便習慣や生活習慣を改善することで、自分で治すコツと市販薬を使う際の注意の仕方、選び方を取材しました。肛門を治療するのは外科医。女性医療ジャーナリスト増田美加が、外科専門医である今津嘉宏先生に伺いました。 身近な不調を解決!女性医療ジャーナリスト増田美加が専門医に聞いた【ドクタートーク】
増田美加(以下、増田):痔などの肛門トラブルは、自力で治せるのでしょうか? やはり、病院で治療しないと、一生つき合っていく病気になってしまうのかと不安になります。 今津嘉宏先生(以下、今津先生):痔などの肛門のトラブルは、ほとんどの場合、生活習慣を改善したり、便通をコントロールしたりすることで治すことができます。軽いうちなら薬局やドラッグストアの市販薬を使ってもOKです。ただし、痛みが強く、症状が我慢できないときは、医療機関を受診することをお勧めします。
痔を改善する市販薬の選び方のコツ
増田:市販のお薬を使ってもいいとのことですが、選び方のコツはありますか? 今津先生:痔の場合は、市販の内服薬なら漢方薬の「乙字湯(おつじとう)」が一般的に使いやすいでしょう。肛門の血流を改善する成分と便通をコントロールする成分が主体になっています。 市販の外用薬は、肛門の皮膚や粘膜を保護する成分と炎症をコントロールする成分が主体となっています。外用薬は、ステロイドが含まれている場合がありますので確認しましょう。いずれにしても外用薬は、1週間程度を目安に使いましょう。それで治らないときは病院を受診してください。 市販の内服薬(西洋薬)は、下剤が含まれている場合がありますので、便通の状態に注意して使います。外用薬の場合は、肛門の皮膚や粘膜にアレルギーを起こす場合がありますので、使っていて違和感があれば中止しましょう。 いずれの市販薬も、個人の責任で購入することになりますから、心配な場合は、薬局の薬剤師さんに相談するか、病院を受診しましょう。 ■漢方薬で治せる痔もある! 増田:市販の漢方薬の「乙字湯」を紹介していただきましたが、漢方薬で痔は治せるのですね? 今津先生:初期から中等度の内痔核や外痔核は、漢方薬で症状が軽減する病気です。漢方医学では、内痔核や外痔核を血流が滞る「瘀血(おけつ)」の症状のひとつと考えます。瘀血を治す漢方薬で治療することが多いです。よく使われる漢方薬は、「乙字湯」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」などです。 裂肛も、漢方薬で症状を軽減できます。裂肛の多くは、便通異常(便秘や下痢など)によって起こるため、便通を調節する漢方薬を使います。よく使われる漢方薬は、「桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)」「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」などです。 肛門周囲膿瘍と痔瘻は、外科の専門医が治療する病気です。外科的な治療を行うとともに、漢方薬も併用できます。特に乳幼児に起こる肛門周囲膿瘍と痔瘻には、「十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)」「黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)」などが使われます。 直腸脱についても、漢方薬を使うことができます。直腸脱は、骨盤底筋などの筋力低下が原因になるため、体力を向上させる漢方薬を使います。よく使われるのは、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」などです。