【痔は自力で治せる?】専門医が教える、自宅での治し方、市販薬・漢方薬の選び方
便秘や下痢を改善することも、痔の治療と予防になる
増田:痔は、便秘や下痢が原因にもなるとのことですが、便秘や下痢などの排便習慣を改善することが痔の予防にもつながりますか? 今津先生:排便習慣と肛門の病気は、密接な関係があります。女性は便意をもよおしても、人前でなかなかトイレへ行けず、我慢してしまうことがあると思います。仕事の日と休日で、排便するタイミングが異なることもあるでしょう。このようなちょっとした習慣が、肛門に負担をかけていることになるのです。 便器に座って長い時間いきんだり、トイレットペーパーでゴシゴシとこすったりしていませんか? これらはすべて痔と関係します。痔に関係する注意したい日常生活のポイントをまとめました。 1・排便は1~3日に1回、朝出ていますか? 食べたものが大腸まで到達する時間は、12~48時間です。排便が3日以上滞っている場合は、便秘です。
2・便の硬さは、バナナのような硬さですか? 便の硬さは、図のような「ブリストルスケール」で分類されています。1~7のうち、3~5が好ましい便の硬さです。それ以外ですと便秘か下痢で、改善すべき便の状態です。 3・トイレに、座っている時間は長くないですか? 長く座っていると、肛門がうっ血してしまい、便が出にくくなりがち。強く力を入れて、排便すると、肛門に負担がかかり、出血の原因になります。 4・お尻を拭くとき、力を入れ過ぎていませんか? ゴシゴシとこすりすぎると、肛門を傷つけてしまいます。ウォシュレットで洗い過ぎるのもよくありません。蒸れてしまい、肛門周囲のかゆみの原因になります。もし、蒸れてかゆみが出たときは、洗い過ぎに気をつけましょう。粘膜にはかゆみが出ないので、かゆいのは皮膚です。清潔にしておけば治りますが、かゆいときは皮膚に市販のワセリンを塗ってもいいでしょう。
生活習慣で痔を予防するコツ
増田:痔にならないようにする予防法は、排便習慣を整えてお通じをよくすることと、ほかに食事や運動、生活習慣で気をつけることはありますか? 今津先生:腸内環境や排便は、ストレスによっても影響を受けます。心穏やかな生活を送ることが大切です。お尻を大切に感じて、いじめないようにしましょう。特に長時間、座ったままにしていると、肛門周囲の血流が悪くなります。寒いところに長時間いるのも、お腹も冷えるし、肛門にも良くありません。また、刺激の強い食事は、消化管粘膜に炎症を起こしやすく、肛門にも刺激が強すぎますので注意しましょう。 【お尻を大切にして痔を予防するポイント】 ●冷えを改善すること 血流をよくして、冷えないように心がけましょう。体を温める食材(生姜、ネギ、ニンニクなど)を取り入れましょう。唐辛子や胡椒などの刺激物は、控えめに。早歩きや、運動をすることで、血行を改善することも大切です。 ●便通を整えること 便通は、消化管の働きによって調節されています。消化管は、副交感神経がつかさどっています。精神的ストレスが加わると、副交感神経の働きは抑えられるため、便秘になります。睡眠不足や疲労などの不調があるときも、副交感神経がうまく働かなくなり、便秘になります。逆に、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうことで、下痢になる人もいます。便通を整えるためには、食事だけに気を配るのではなく、精神的ストレスにも注意が必要です。そのために、良い睡眠を心がけることも大事ですね。 芝大門いまづクリニック 院長 今津嘉宏(いまづよしひろ)先生 藤田保健衛生大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部外科学、東京済生会中央病院外科副医長、慶應義塾大学漢方医学センター助教ほかを経て、2013年より現職。藤田医科大学医学部客員講師。日本外科学会認定医・専門医、日本消化器病学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医。西洋医学と東洋医学の双方に精通し、科学的見地に立った漢方診療を行う。主な著書に『健康保険が使える 漢方薬の事典』(つちや書店)、『まずはコレだけ! 漢方薬』(じほう)ほか多数。 イラスト/大内郁美 企画・構成・取材・文/増田美加