「あの打ち方をできるのは、投手だから」 大谷翔平の異色のバッティングの秘密とは? 10代の頃の大谷に相談を受けた専門家が解説
19歳の大谷にしたアドバイスの内容
9月19日(日本時間20日)、ドジャースの大谷翔平(30)が、前人未到の「50本塁打&50盗塁(50-50)」を飛び越え、「51-51」に到達。移籍1年目でMVPも視野に入った躍進はなぜ可能になったのか――。大谷に肉体づくりについて相談されたこともある専門家の見解を交え、データと肉体の両面から活躍の裏側に迫る。【前後編の後編】 【写真を見る】まるでセレブ! 美人ぞろいのドジャース選手の「奥さん会」 ***
前編【「打ち損ないでもレフトスタンドに」 大谷翔平のバッティングはどこが変わったのか? データから徹底分析】では、大谷翔平のバッティングが向上したポイントについて、専門家の見解を紹介した。 動作分析の専門家である筑波大学体育系の川村卓教授が明かす。 「日本ハムに入団した13年のシーズンオフ、私の話を聞きたいと大谷選手が研究室を訪ねて来たことがありました。彼は『どのように体をつくっていけばパフォーマンスが上がるのか』と、真剣に考えていたのです」 球界では当時、肉体改造がはやっており、パンプアップした体をつくる選手が目立ったというのだが、 「急激に筋肉をつけると大きな筋肉ばかり鍛える結果になってしまいますが、腕をしならせる時には小さな筋肉を多く働かせて、滑らかな動きをつくり出す必要がある。私は19歳だった彼に『細かい筋肉も含めて徐々に体をつくっていったほうがいい』『20代後半に体が完成するようなイメージで』などとアドバイスしました」
「バットドロップを克服」
その川村教授に、今季の活躍をあらためて分析してもらうと、 「昨季の開幕直前に大谷選手は、重さはそのままでバットを1インチ長くして34.5インチにしました。バットは長い方がスイング速度は上がり、外角にも届きやすくなる半面、扱いが難しくなります。彼のように上からいったんバットをダウンに入れて引き上げる打撃では、無駄なく頂点からバットを落とすことが重要。高い位置からバットを振り下ろせばそれだけスイングスピードも増しますが、バットが長くなると振り下ろす時にヘッドが捕手側に倒れる『バットドロップ』が生じやすくなり、大回りして速球に差し込まれるリスクが高まります」 昨季の序盤には、この状態が見受けられたといい、 「そこで彼はシーズン中、トップ(グリップ)の位置を少し下げて調子を取り戻しました。ところが今季は再び序盤から高いトップを維持している。バットドロップを克服したことが見て取れます」