2018年「オリジン・オブ・恐竜」(中):進化のカギ?超大陸パンゲアの世界
恐竜の起源をめぐる数多くの謎を解くカギを握るのは、骨格化石だけとは限りません。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が、最古の恐竜が出現したのはいつごろなのか、なぜ多様な進化を遂げることができたのか、研究報告などをもとに整理します。 ----------
化石記録における最古の恐竜
さて以下に今までに知られている最古の恐竜化石記録の分布パターンをまとめてみた。まずはじっくりとご覧になっていただきたい。 「最古の恐竜」と銘を打てそうな種の化石標本の出現年代を探る時、三畳紀(2億5190万―2億130万年前)という5000万年以上に及ぶ非常に長い時代のうち、ある特定の期間にとりあえず的を絞ることができるようだ。 特に三畳紀中期(2億4720万―2億3700万年前:アニシアン期とラディニアン期Anisian & Ladinian Stages)から後期の前半(2億3700万―2億2700万年前:カーニアン期Carnian Stage)の「三つの時代区分」がカギとなるようだ。 (筆者からの提案:こうした時代の名前に日頃聞き慣れていないと紛らわしく感じる方が多いかもしれない。便宜上、ここでは「時代I、II、そしてIII」と古いものから順番に呼んでおくことにする。「時代I」と「時代II」は三畳紀中期、そして「時代III」は三畳紀後期の前半にあたる。「時代I」がここでは一番古い時代をさす。)
現在知られている限り最古の恐竜型類Dinosauromorphaの「骨格化石」は、アシリサウルス(Asilisaurus)やニヤササウルス(Nyasasaurus)だ(Nesbitt等2012)。両方ともアフリカ・タンザニアの「時代I」(アニシアン期の後半)の地層から見つかったと報告されている。 ―Nesbitt, S.J., P. M. Barrett, S. Werning, C. A. Sidor, & A. J. Charig (2012) The oldest dinosaur? A Middle Triassic dinosauriform from Tanzania. Biology Letters 9: 20120949. 南米アルゼンチンのラゲルぺトンLagerpeton(時代II)や北アメリカのニューメキシコ州で見つかったドロモメロンDromomeron(時代IIIのすぐ次のノーリアン期)も、恐竜型類に属すと考えられている。 最古の恐竜の骨格化石自体が「非常に少ない」という事実は見逃せない重要な要素だ。私は個人的に骨の『かけら』一つだけで「最初期の恐竜型類や恐竜形類」といわれると、少しうなってしまう。「本当だろうか」という率直な感情もしゃしゃり出てくる。 その当時、実はかなりたくさんの初期主竜類(Archosauria)の系統であるクルロタルシ系(Crurotarsi)に属す仲間が存在していた。(もしかして判定が混濁されている可能性はないだろうか?)もしかすると実は、より先進的な「恐竜形類」(または恐竜上目!)の種が、時代IIにすでに登場していた可能性はなかっただろうか? そして特に古い時代に行くほど、骨格化石の数が少ないということは「まだ知られていない」「発見されていない」時代I前半、または「三畳紀前期」の恐竜がいた可能性はないだろうか?