全国でPFASの検出相次ぎ、政府が対応策 「水の安全確保」へ実態把握と対策急務
環境省と国土交通省は8月末現在、改めてPFASに特化した水道水の汚染状況調査を実施中だ。この調査は水道の小規模事業者にも対象を拡大した初の大規模調査で、47都道府県の担当者や国が認可する水道事業者などに文書で調査を要請している。調査期限は9月末で、結果は専門家会議での議論にも反映される。
環境省はこのほか、PFOSなど特定のPFASを含む泡消化剤の在庫量調査や、特定の場所での土壌中のPFAS測定調査なども行っている。
発がん性評価で日本は慎重姿勢
PFASは人体には水のほか、魚介類や農作物を介しても消化管から吸収されると考えられている。その後徐々に排せつされるが、例えばPFOSの体内での濃度が半分になるには数年程度かかるとの指摘もある。ただ、PFASが人体に与える詳しい健康への影響はまだ解明されていない。
WHO傘下の国際がん研究機関(IARC)はPFASのうちPFOAについては4段階ある発がん性評価のうち最も高い「発がん性がある」に、PFOSについては4段階の下から2番目の「可能性がある」に分類している。米科学・工学・医学アカデミーも腎臓がんや胎児の成長抑制との関連について「十分な証拠がある」と評価している。
一方、日本国内では健康への影響について今のところ慎重姿勢が目立つ。内閣府の食品安全委員会(山本茂貴委員長)は6月25日にPFASの健康影響に関する初の評価書を決定した。海外の論文などを分析した結果で、PFOSやPFOAと、出生時の体重低下やワクチン接種後の抗体低下との関連については、「否定できない」としつつ、「影響は不明」「証拠は不十分」などとしている。
またPFOAと腎臓がん、精巣がん、乳がんの発がん性との関連については「研究調査結果に一貫性がなく証拠は限定的」、PFOSと乳がんの発がん性との関連については「証拠は不十分」との評価にとどめている。
そして人が1日に摂取する許容量(TDI)は代表的2物質についてそれぞれ体重1キロ当たり20ナノグラムとした。この数値は米国の学術機関の調査研究などを参考にしている。ただ、食品安全委員会は今回の評価結果について「科学的知見が集積してくればTDIを見直す根拠となる可能性はある」と含みを持たせている。