全国でPFASの検出相次ぎ、政府が対応策 「水の安全確保」へ実態把握と対策急務
市民団体など血液検査求める
大阪府摂津市の地下水から高濃度のPFASが検出されたことを受け、地域住民らに血液検査を実施した京都大学と市民団体「大阪PFAS汚染と健康を考える会」のグループが8月11日に記者会見して検査結果を公表し、国に公費での血液検査や血液濃度の基準値策定などを求めた。
記者会見での公表によると、大手空調メーカーのダイキン工業は過去、摂津市の淀川製作所を含めてPFOAを取り扱っていた。検査は摂津市など大阪府と兵庫県内の住民のほかダイキンの元従業員ら1190人が対象で、2府県の約30の自治体で実施した。
PFOSやPFOAなど4種類のPFASの血中濃度を米国などが定める指針値と比較した結果、米国の値(1ミリリットル当たり20ナノグラム)を超過した人が約30%いた。米国の指針値の約30倍もの高値を示した元従業員も1人いたという。
会見で京都大学大学院医学研究科の原田浩二准教授は「地域ごとの特徴を把握して、対策していくことが行政に求められている」と述べた。そして「日本では汚染度が高い地域での健康影響調査が乏しい」と指摘。「健康への影響の全体像を捉えるためにはPFAS曝露量が高い集団を含めた調査が必要」と強調している。
血液検査については高濃度のPFAS検出地点周辺の住民や自治体のほか、東京民主医療機関連合会など医療団体や医療関係者らも公費による広範な検査実施を求めている。だが、公費による血液検査については環境省内から「むやみに調査すると不安をあおる」「血中濃度を測っても個人の健康リスクは特定できない」といった声も聞かれる。
対策の基本は信頼できるデータ
対策の基本は客観的、科学的で信頼できるデータだ。環境省が改めて全国の水道水のPFAS調査を実施しているのは正確な汚染実態の把握をして効果的な対策を進めるためだ。ただ、肝心の「PFASの血中濃度と健康影響の関係」についての詳細は分かっていない。幸いまだ深刻な健康被害の報告はなく、国内外を問わず人の健康に与える科学、医学的データが十分得られていないためだ。