4勝9敗に終わった楽天の田中将大にメジャーからの復帰オファーはあるのか…意外な評価と移籍条件
では、16年と19年の真っすぐの縦の変化量の差は、どこに起因するのか。STATCASTから回転数、平均球速、ボールの回転方向を調べたが、16年と19年に大きな差はなかった。しかし、回転効率は16年が83%だったのに対し、19年は72%と11%も下がっていた。 回転効率は、ボールを真上から見た場合、回転軸が真横、つまり、きれいなバックスピンがかかっていれば100%。回転軸が真っすぐホームベースに向かっていれば(ジャイロ回転)0%となる。 回転効率が100%に近ければ近いほど、ボールの回転数をより効果的にボールに伝えられる。低ければ、回転数が高くてもそれを無駄にすることになる。11%という差は小さくなく、それが約10センチという縦の変化量の差を生んだ一因と捉えられる。 もっとも、回転効率が下がったことで、真っすぐとスプリットの縦の変化量の差が小さくなり、スプリットが落ちないと映るなら、その修正は回転方向のそれと比べれば、決して難作業ではない。 回転方向の場合、アームアングルや上半身の傾きに加え、下半身の動きから見直しを求められるケースもあり、やっかいだ。今年後半、マリナーズの菊池雄星が苦しんだのは、まさにそこ。本人もアームアングルが変わったことを認め、「意識して直そうとしている」と試行錯誤を繰り返した。「下半身なのか、上体の傾きなのか、そこら辺をうまく掴みたいなあと思いながら、一つ一つ、しらみ潰しにやってるような状態」。だが結局、最後まで明確な答えを見つけられなかった。短期間での修正は容易ではないのだ。 一方で回転効率は、リリース時の前腕の角度、握りを工夫することなどで解決することが多い。チームによってノウハウは異なるので、動作解析やデータ分析に優れたチームであれば、田中の問題が真っすぐの回転効率であり、結果としてスプリットが効果を失っていたのだとしたら、十分に再生は可能だと考えているのではないか。 結局、スカウトが真っすぐにこだわるのは、「必ずしも空振りを取ったり、打ち取ったりするためではなく、スプリットやスライダーをよりいかすため」とのこと。それは一般論でもあるが、「田中の場合、複数の球種でボール球を振らせられるような制球力もあるので、真っすぐの質次第では、まだまだ、多くのチームにとって魅力的に映るだろう」と補足した。 さて、田中は11月6日から始まるパ・リーグのクライマックスシリーズ、ロッテとのファーストステージでどんなピッチングを見せるのか。25日にオリックスの山本由伸と投げあったレギュラーシーズン最後のような登板が続けば、米のストーブリーグがざわつくのかもしれない。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)