4勝9敗に終わった楽天の田中将大にメジャーからの復帰オファーはあるのか…意外な評価と移籍条件
続いて「獲得を検討しているチームが気にするのは真っすぐの質に関するデータではないか」と推測した。 「新型コロナの影響で日本への渡航が制限されているので、我々は今年、生で日本の選手を見る機会がなかった。よって映像とデータを評価の参考にするしかないが、真っすぐのデータをまずは大リーグ時代と比較し、その上でスプリットの数値も確認することになるのだろう」 2019年、田中が不振に陥ったとき、度々、「スプリットが落ちなくなったから」などと言われたが、「実際は、真っすぐの質に問題があった」とスカウトは振り返る。 そこへ話を進める前に、MLBが2015年に導入したデータ解析ツール「STATCAST」から田中のスプリットのデータをたどると、確かに19年のスプリットの平均は、18年に比べて5センチほど、落下幅が小さくなっていた。ところが、キャリアベストだった16年と19年のスプリットを比べると、後者のほうが平均で約6.7センチも落ちている。 つまり、「スプリットが落ちなくなったから」という部分だけを切り取って、不振の要因とすることには無理がある。あくまでも他の球種との関連で判断すべきで、よってスカウトも、「まずは真っすぐの質を確認した上で、スプリットのデータを」と指摘するのである。 それぞれのデータだが、ポイントは2つ。まずは、横の変化量。右投手の場合、真っすぐもスプリットもややシュート気味の軌道を描くが、それぞれの横の変化量が近ければ近いほど、相手は真っすぐかスプリットかの球種判断がつきにくくなる。田中の場合、スプリットの方が横の変化量が大きいが、今年、真っすぐとの差はどの程度だったのか。その数値次第ではスプリットがあまり落ちなくても効果的となる。 続いて、縦の変化量。ここで16年と19年における真っすぐとスプリットの関連をたどるが、16年の真っすぐというのは、19年に比べて約10センチも縦の変化量が大きかった。16年の縦の変化量は大リーグ平均と比べても大きいので、相手には「ホップしている」と映ったのではないか。そして、その16年の真っすぐとスプリットの縦の変化量の差を調べると約30センチだった。ざっくり言えば、真っすぐの平均到達地点から約30センチ落ちている、という解釈になる。 一方、19年の2球種の差はおよそ27センチ。よってスプリットの落差だけを比較すれば19年のほうが大きいものの、打者としては16年の方が落ちていると感じたはず。3センチの差はファウルが空振りになりうる。