「政府の景気回復宣言」と「国民の景況感」が嚙み合わないトホホな理由【経済評論家が解説】
投資家のみならず、サラリーマンにとっても主婦にとっても気がかりな、わが国の景気動向。しかし、国が景気回復を宣言しても、実感との乖離を訴える人も多く、疑問が残るようです。なぜでしょうか? 「景気」の概念とその性質の基本から、経済評論家の塚崎公義氏が解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
最近では「在庫循環」による景気変動は滅多にない
経済学の教科書には「景気がよくなったり悪くなったりするのは在庫循環等が原因だ」と書いてあります。 景気がよくなると企業は増産する ↓ 増産しすぎると在庫がたまる ↓ 溜まった在庫を減らすために減産すると景気が悪化する ↓ 減産がいきすぎて在庫が不足する ↓ 企業が増産を始めるので景気がよくなる というわけです。 昔は、経済に占める製造業の比率が高かったですし、在庫管理技術も未熟でしたから、そうしたことが重要だったのでしょうが、いまではサービス業の比率が高くなり、製造業の在庫管理技術も進歩しているので、在庫循環が景気を動かすことは滅多にありません。好況期に作りすぎて在庫がたまり、在庫削減のための減産が次の不況を深刻化させる…といったことは、いまでも起こりますが。 設備投資循環についても、過去は「景気拡大期に各社が一斉に設備投資をし、10年経つと各社の設備が古くなるので一斉に更新投資をする」といったことで、周期的に設備投資が盛り上がって景気を押し上げるといった現象が見られたようですが、最近ではコンピュータ関係など買い替え周期が短いものも増えてきているので、各社一斉に…というわけではないでしょう。 建設投資循環に関しても、建造物の耐用年数はそれぞれ大きく違っています。「コンドラチェフの波※」については、筆者は学生時代からまったく理解できていませんでした(笑)。 ※ 景気循環(サイクル)に関する学説のひとつ。 そもそも、リーマン・ショックのような出来事があると、それまでの在庫循環等々は振り出しに戻るわけで、「小さなリーマン・ショック」ならどうなるか、といったことを考えると、いまの経済には教科書の理論はあまり当てはまらないと考えておいたほうがよいでしょう。