米国の利下げがなぜくらしに影響する? トランプ政権で物価高継続のリスクも #くらしと経済
米国の中央銀行に相当する連邦準備制度理事会(FRB)は9月に利下げ路線に転換、11月、12月にも追加で利下げが行われました。この影響で円安が修正されて、日本の物価高が緩和されると期待されています。ただ、年明けに発足するトランプ政権の対応次第では、日本は再び物価高の苦境に追い込まれる可能性があり注意が必要でしょう。なぜ海を隔てた米国の金利が日本の物価に影響を与えるのか、米金利はトランプ政権でどうなるのか、世界経済に詳しい時事通信社解説委員の窪園博俊氏に解説してもらいました。
2020~23年の米金利、ほぼゼロから急上昇し5%台
米国の中央銀行に相当する連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ路線に転じました。米国ではコロナ禍から抜け出す際、かなり激しいインフレが起きました。これを抑制するため、FRBは積極的な利上げを行いました。そして、やっとインフレが落ち着き、利下げできる環境になりました。
少し詳しくコロナ前後の米経済・物価と金融政策の対応を解説します。2020年にコロナ禍が始まり、その翌21年から米国の経済は回復基調となりました。このときに世界的な需要の回復から原油相場が上昇。さらに22年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻で原油価格の上昇に弾みがつきました。日本も原油高で物価が上がりましたが、脱コロナの早かった米国は先行して物価が高騰しました。こうして発生したインフレを抑えるのは中央銀行の重要な仕事です。FRBはインフレ抑制のため、積極的な利上げを実行し、米国の政策金利は急速に上昇しました。 コロナ禍に見舞われた際、FRBは打撃を受けた経済を支えるために政策金利をゼロ%近くまで下げました。しかし、前述のように一気に進行したインフレに対応するため、22年に大幅に政策金利を引き上げました。政策金利は23年に5.25~5.50%のピークに達し、その状態でインフレの沈静化を見守りました。インフレは(日本も同様ですが)消費者物価指数で測ります。FRBは目標とする消費者物価指数の前年同期比上昇率を「2%」に設定しています(日本の中央銀行である日銀も同じ水準です)。今年に入って消費者物価指数の上昇率は目標の2%に接近。FRBは利下げしても大丈夫だろう、と判断して政策金利を引き下げ始めました。