共同親権「離婚観」と「子ども観」変えられるか? 3識者インタビュー #令和の人権
結婚に学歴は関係ありませんので、義務教育ですべきですね。ところが、義務教育のなかの性教育ではセックスの話ができないと聞いて、驚愕しました。女子学生に、「なぜ避妊を彼氏に相談できないの?」と聞くと「嫌われたら困るから」と答えます。自分がされたら嫌なことを「嫌」といえない教育が行き届いているとしか思えません。「誰かにとってのいい子」であり続けることしか学んでいない子どもは、自分が何を欲しているのか、表明することができません。自分が「嫌」でも、誰かのために我慢することを学ぶのです。その結果、自分で自分の人生を選択できなくなります。我慢をし続けると、怒りが一息に噴出してしまいます。 毎年新入生に未来のライフコース選択においてアンケートしています。今年は20%の受講生が「DINKs(共働きで子どもがいない夫婦)」を選択しました。今までは10%前後だったのに。新入生は2005年生で、この年は合計特殊出生率が1.26と当時史上最低の記録を更新しました。親世代は就職氷河期を経験した団塊のジュニア世代です。事実、彼女たちの母親世代に近い1975年生まれの女性の生涯未婚率は28.3%(OECD発表)ですから、3人に1人は子どもがいません。その子ども世代で、「おひとりさま」を希望する6%の学生を合わせると、4人に1人、26%が18歳で「子ども」をもたない未来を選択している。子を持つと対等ではなくなる、と女子学生は察知しています。結果として、共同親権問題は減少する未来が待っているともいえるのです。 子どもを産むか産まないかも含め、自分で決められる権利はリプロダクティブ・ライツ、自分の愛する人、プライバシー、自分の性のあり方を自分で決められる権利はセクシャル・ライツです。自分の「性」について、周りからとやかく言われることなく、ご機嫌でいられること(セクシャル・ヘルス)、妊娠・出産する人も、しない人も、心身ともに満たされて健康にいられること(リプロダクティブ・ヘルス)、まとめてSRHR(Sexual and Reproductive Health and Rights)といいます。すべての人の「性」と「生き方」に関わることです。共同親権の前に、真剣に「入口」の「入口」について誰かと話し合ってみることから、始めませんか?
--- 神田憲行(かんだ・のりゆき) 1963年、大阪市生まれ。関西大学法学部卒業。師匠はジャーナリストの故・黒田清氏。昭和からフリーライターの仕事を始めて現在に至る。主な著書に『ハノイの純情、サイゴンの夢』、『横浜vs.PL学園』(共著)、『「謎」の進学校 麻布の教え』、将棋の森信雄一門をテーマにした『一門』など。