共同親権「離婚観」と「子ども観」変えられるか? 3識者インタビュー #令和の人権
子どもは権利の主体「意見表明権」入れてほしかった 間宮静香さん(弁護士)
私は子どもの権利を中心に取り扱う弁護士ですが、今回の民法改正に大きな関心を持っていました。というのは、日本が子どもの権利条約を批准して30年になるのに、いまだにその内容を十分に実現する国内法が整備されていない、と感じるからです。 議論の過程では、共同親権の導入をめぐる父母間の争いがメディアで繰り広げられていて残念でした。子どもに重大な影響のある法改正なのに、子どもが蚊帳の外に置かれてしまっている。大人が勝手に「子どもにとって一番いいことを考える」ということに違和感があります。 単独親権か共同親権かを考える際には、まず「子ども観の転換」を行わなければなりません。「転換」とは、子どもを権利を行使する「主体」と捉えることです。でも改正民法は、というか日本社会全体が、子どもをケアする対象(「客体」)としてしか見ていないのではないでしょうか。 親権というと親の権利というイメージが強いですが、同条約の考えを推し進めていくと、親は子どもが権利主体として自立していくために支援する義務者だってことなんですよね。 改正民法で「子どもの意見表明権」(同条約12条)が規定されなかったことは、大きな問題です。これは同条約3条で規定されている「子どもの最善の利益の保障」とセットになっています。 子どもは一人ひとり考え方、捉え方が違います。親とも違うし、当然、裁判官とも違います。「子どもの最善の利益」を考えるときは、まず当人から話を聞いて、それを前提に、いろんな状況を勘案して最後は大人が責任を持って決める、というのが「最善の利益の保障」です。もちろん子どもの年齢や成長の度合いによって、聞き取り方やアプローチは異なってくるでしょう。明確に「○○したい」と意見表明できないケースもあるかもしれません。それでも、現状を説明し、子どもの気持ちを聞くことは、子どもの権利を守るプロセスのなかで欠くことができないものなんです。