共同親権「離婚観」と「子ども観」変えられるか? 3識者インタビュー #令和の人権
改正法案を検討する法制審議会でも、子どもの意見表明権を条文に書き込むことが検討されましたが、「子どもにどちらかの親を選ばせるのは酷」「子どもに責任を負わせてしまう」という反対論によって見送られてしまいました。意見表明権は、意見を聴かれる権利とも言います。親を選ばせることではなく、子どもの気持ちを聞き、できる限り尊重するというもので、あくまで決定する責任は裁判官などの大人にあります。 今回の法改正に意見表明権が必要だと思うのは、「子どもの手続代理人制度」での経験があるからです。これは離婚調停などが行われている際に、子どもの手続代理人として選ばれた弁護士が、子どもの「代理人」として手続きに参加する制度です。2013年に施行された家事事件手続法で導入されました。 親が離婚するとき、子どもは「同じ学校に通えるのか」「住むところが変わるのか」など、不安が募ります。しかし何も知らされないまま、離婚の手続きがどんどん進んでいく。そこで、子どもの手続代理人弁護士は、「お父さんとお母さんはこんな話をしているよ」「あなたは、どう思う?」と子どもに説明し、そのときの気持ち、意見を裁判所に伝えていきます。私は、「あなたの意見が後から変わってもいい」とも伝えます。家裁の調査官は中立の立場からの参加ですが、子どもの手続代理人ははっきりと子どもの立場から参加します。親が大切だからこそ親の顔色をうかがってしまう子どもにとって、自分だけの味方になる存在は大きい、と私は考えます。 実のところ、子どもの手続代理人制度はあまり利用されていません。最高裁判所家庭局による2021年の調査では、紛争3万件超のうち、利用は64件と、0.2%以下の利用率でした。理由はいろいろありますが、一つは、専門家の間ですら、子どもを権利の主体として子どもの権利の概念や制度が理解されていないことです。子どもの手続代理人の選任は裁判官の職権でもできるのですが……。 親の離婚を経験する未成年の子どもは年間で20万人近くいます。昨年、「こども基本法」が施行されました。学校の先生たちが「子どもの権利を学ばなくてはいけない」という雰囲気に変わって、私も研修に呼ばれる機会が増えました。今回の改正民法もよく読むと練るところはちゃんと練られていますし、全体的には子どもの権利保障に向かっている。少しずつですが前進していることは間違いないと思います。それだけに、親権を子どもの権利の観点から捉え直し、子どもの意見表明権を入れてほしかったという気持ちが強いです。